BRIEFING.229(2010.08.02)

家賃の鑑定評価における「借家の敷地」

家賃の鑑定評価にあたって求められる「基礎価格」(BRIEFING.159参照)は、建物の価格だけではなくその敷地をも含めた価格となる。借家人は反射的にその敷地をも利用しているからである。

ここでは家賃評価に係る「基礎価格」に含むべき敷地を「借家の敷地」と呼ぶこととする。

一棟の建物の一部を賃借している場合、たとえば10階建てのビルの3階だけを借りている、あるいは、全30戸のマンションの1戸を借りている、といった場合、その「借家の敷地」はその一棟の建物の敷地の何%かということになる。

そしてその割合は、専有床面積割合や、これに効用比(BRIEFING.118参照)を考慮した割合(効用積数割合)等とされる。

では、一棟の建物の敷地の範囲はと言うと、一般的には建築基準法上の敷地(BRIEFING.150参照)であるが、その敷地の一部がオーナーの専用駐車場に供されていたり、月極駐車場にされていたりという場合には、判断が難しくなる。

安易に判断すると、借家人以外の者に占有されている土地まで、借家の効用に寄与すべき土地として基礎価格に含めてしまうことになる。

「借家の敷地」を過大に判断しては不当に積算賃料を引き上げてしまう。賃貸借契約書だけからでは分からないことだけに判断が難しい。

なお、敷地の一部である月極駐車場も「借家の敷地」と判断した場合には、その駐車場にも効用積数を割り振るべきだろう。

次に、平屋の店舗をその隣接駐車場付きで賃貸しているといった場合、あるいは、古民家をその隣接農地付きで賃貸しているといった場合はどうだろう。

この場合には、建築基準法上の敷地の範囲にかかわらず「借家の敷地」を広く認定しなければならない。但しこのような場合、賃貸借契約書で(少なくとも口頭で)その範囲が示されるのが通常であるから分かり易い。

しかし、その駐車場や農地が相当に広い場合、その使用の対価全部を「家賃」と言ってよいものか、つまり「借家の敷地」と呼ぶべきかどうか難しいところである。

他に「借家の敷地」の範囲が悩ましい場合としては、次のような場合が考えられる。

1,000uの建築基準法上の敷地に、大家さんの自宅(200u)と離れ(50u)があるとする。立派な庭があってそれを離れの縁側から眺めることもでき、その住人は多少気を使いながらなら庭の散策も可能とする。但し賃貸借契約書で示された賃貸借の範囲は、離れの建物だけ。その離れの「借家の敷地」は、そして基礎価格は如何に。

こんな借家なら、きっと大家さんの善意で賃料も格安なのだろう。


BRIEFING目次へ戻る