BRIEFING.230(2010.09.27)

価格形成要因の比較における重複考慮の排除

取引事例比較法によって土地の価格を求める場合、取引事例に係る地域と対象不動産の存する地域(近隣地域という)とにおける地域要因を比較し、さらに近隣地域における標準的な画地と対象不動産との個別的要因の比較を行う(BRIEFING.145146147参照)。

地域要因とは、地域における価格形成要因、例えば接面街路の幅員、駅からの距離、地域の環境、容積率といったものである。

これらについて比較し、両者の格差を認識してゆくのである。

この場合、1つの要因を重複して考慮し、過大な格差を認識してしまうことがないように留意しなければならない。

例えば、街路幅員が狭いがために容積率も制限を受けるといった場合、これによるポイント差を重複考慮してしまうおそれがある。街路が狭いことと容積率が低いこととを、分けて考える必要がある。

また、街路幅員が狭ければ居住環境も悪い場合が多いため、同様の誤りを招きやすい。街路幅員で3ポイントの差を付け、居住環境でも10ポイントの差を認識したが、実は居住環境については7ポイント程度でよいこともある。この場合は、居住環境が極めて主観的であるという点もあって、街路幅員の広狭と居住環境の優劣を分けて考えるというのはなかなか難しいことである。

街路幅員は一方が6m、他方が4mだが、居住環境は対等だという場合や、逆に幅員は同じだが居住環境が異なるという場合を想定してみれば分かり易いかも知れない。

個別的要因においては、間口狭小、奥行長大(間口と奥行の関係)、奥行逓減(奥行の深さ)、不整形、といった概念に重複が生じやすい。一層のこと“形状”としてひとまとめにし、ザックリ判断した方が適切な結果を導けることもある。

価格形成要因を細分化して、個々に比較することは、一般には評価の精度を向上させると思われる。しかし、重複考慮の排除が欠かせない。

重複考慮が避けられないのなら、全体を把握して総合的にザックリ判断する方がよい。そもそも、市場とはそういうものなのであるから。


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