BRIEFING.232(2010.10.28)

区域外の環境貢献による容積率緩和

国土交通省成長戦略会議の「国土交通省成長戦略」(5月17日)には、住宅・都市分野における政策案として「幅広い環境貢献の取組みを評価して容積率を大幅に緩和する」という記述が見られる。

これを受け、同省都市・地域整備局長は先月「都市計画運用指針」を改正している。

その改正点のうち、都市再生特別地区における容積率等の緩和に関し、次の文言が挿入された点は注目すべきである。

「当該都市再生特別地区の区域外の土地の区域において幅広い環境貢献の取組(緑地の保全・創出、歴史的建造物等の保存・活用、親水空間の整備、必要な都市基盤の整備・管理等の都市全体からみた都市の魅力の向上等に資する取組)を民間事業者が行う場合にあっては、これを積極的に評価することも考えられる。」

単に、容積率の緩和を受けるビルの敷地内に公開空地を設けるといったものではなく、どこか離れた所に緑地や親水空間を確保するということもOKという訳である。

「環境貢献が同一都市計画区域内におけるものであるなど都市計画決定権者が的確に対応することが可能な範囲のものであること」も求められているから、九州の里山保全に貢献したからといって東京のビルの容積率を割り増しすることはできないものの「同一都市計画区域内」といった相当に広い範囲が想定されている。

これまでにも、東京駅周辺のような、街区をまたいだ容積率の移転や、商業施設の付置義務駐車場を離れた土地に確保するといったことは行われてきたが、これらの多くは、両土地が徒歩数分内といったものである。

「同一都市計画区域内」では、両土地の一体関係が忘れられ、いつの間にか、保全されるべき緑地が駐車場になっていたとか、開発業者に転売されていたといったことがないよう、何らかの担保措置が必要だろう(BRIEFING.150参照)。

この点、参考になるのが区分所有建物の敷地権の登記である。これが応用できないか。離れていても、両土地の一体関係を登記簿で公示することができる。

また、保全すべき緑地を承役地、容積率緩和をうける土地を要役地とする地役権の応用も一案であろう。

しかし「環境貢献」をどういった物差しで「評価」するかは、恣意性が介在しやすく悩ましいところでありルールの策定・公開等が求められる。


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