BRIEFING.238(2011.01.19)

ミニ開発の「業者利益」

いわゆるミニ開発とは、不動産会社や建設会社が、市街地でまとまった土地を取得して区画割りし、一戸建住宅として、またはその用地として販売するための開発を言う。広大な林地や農地を開発して数百、数千戸もの住宅を供給する大規模開発ではなく、通常は、すでに宅地であった土地に2戸から20戸程度の住宅供給をするものと考えられる。

開発区域内に、幹線道路や公園、遊水池、学校まで整備する大規模開発に対し、既存のインフラを利用して狭小な区画の住宅を供給することから、どちらかと言えば否定的に使われる用語である。

さて、このようなミニ開発による住宅は、敷地が狭小であるため、総額が建物の面積の割には安くなるが、反面、土地建物ともに単価は高くなりがちである。実際、土地の単価はその地域の相場の地価よりかなり高い場合が多い。

不動産鑑定評価においては、このような取引事例に係るその差額を「業者利益」ととらえ、それを土地価格・建物価格以外のものと考える場合がある。

しかし、業者間にも価格競争はあるし、「業者利益」のない仲介物件との競合もあるだろう。にもかかわらず消費者がそれを選択するのであるから、いわゆる「業者利益」もその物件のもつ価値の一部と考えることができる。

業者は、融資を受けて広い土地を取得し、測量して造成・区画割りし、必要に応じて道路を築造し、側溝や上下水道を整備する。それは誰にでもできるものではない。

消費者からすれば、手ごろな価格ですぐ住める、便利な住宅ということになる。

そう考えるとミニ開発の建売住宅は、専門知識や経験がなければ作り出せない優れた商品であることが分かる。

またそもそも「業者利益」は土地の仕入れ価格に大きく依存し、外見からは「業者利益」に見えても、高い時に用地を取得していたために実は赤字という場合もあろうし、逆に「業者利益」などないように見えても、安い時に用地を取得していたために実は大きな「業者利益」が生じていたという場合もあろう。

「業者利益」は結果として市場の販売価格と原価の差として生ずるものであり、外観からは把握できないものなのである。安易に「業者利益」を判断すべきではない。


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