BRIEFING.241(2011.03.10)

UR高額賃貸マンション売却へ?

国土交通省は、UR(独立行政法人都市再生機構)の財務体質改善を図るべく、その所有する高額賃貸マンションを民間に売却する方針を固めた。

まずは首都圏の家賃20万円程度のもの、おそらくその多くはタワーマンション、から売却される見込みである。購入した事業者には、1戸単位の分譲(転売)も認めるという。

さて、都心に立地するあるUR賃貸マンションの一部住戸には、バルコニーの一部をガラス張りとしたような「インナーテラス」がある。高層階の「インナーテラス」は、夜に遠くの夜景を臨み、昼に近くの公園を見下ろす絶景である。

しかし眼下の公園の木々の間にはブルー・シートが垣間見える。「インナーテラス」でくつろぎつつ、見下ろすのはホームレスのテントなのである。

その住戸の家賃は高額であるが、立地や広さを考えれば民間の相場よりはかなり安いと思われる。権利金は必要ない。実際、募集に対し応募は数倍となったようである。

国の補助を受けるURが、くじに当たった人(しかも十分に所得のある人)に、割安な高額賃貸住宅を供給することにどんな意味があるのだろうか。一方で、民間の賃貸住宅経営を圧迫することにもなる。

少し冗長にはなるが、ここでURの目的((独)都市再生機構法第3条)を掲げておく。

「機能的な都市活動及び豊かな都市生活を営む基盤の整備が社会経済情勢の変化に対応して十分に行われていない大都市及び地域社会の中心となる都市において、市街地の整備改善及び賃貸住宅の供給の支援に関する事業を行うことにより、社会経済情勢の変化に対応した都市機能の高度化及び居住環境の向上を通じてこれらの都市の再生を図るとともに、都市基盤整備公団から承継した賃貸住宅等に関する業務を行うことにより、良好な居住環境を備えた賃貸住宅の安定的な確保を図り、もって都市の健全な発展と国民生活の安定向上に寄与すること」。

確かに、住宅セイフティーネットはURの仕事ではない。公営住宅が担うものである。だが、「インナーテラス」からホームレスのテントを見下ろす風景は「都市の健全な発展」の姿とは言えまい。また、くじに当たった人に割安な高級賃貸マンションを供給することが「国民生活の安定向上に寄与する」だろうか。

URに期待されるのは、民間では困難な基盤整備や大規模再開発であろう。高級賃貸マンションの売却は、財務体質改善を抜きにしても、進めるべきである。


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