BRIEFING.242(2011.03.17)

家賃より安いローンの支払い

不動産価格が安く、金利が安い時代には、家賃より安いローンの支払いで家が買えるという場合がある。近年、珍しくなく、分譲マンションの謳い文句にも見られる。

但し、賃借の場合には、当初の出費が敷金・権利金のみでよいが、購入の場合には、頭金が必要である。登録免許税に不動産取得税も必要である。修繕積立一時金が必要な場合もある。

また、賃借の場合には、家賃の他、毎月の支払いは共益費のみでよいが、購入の場合には、ローンの支払いの他に、管理費・修繕積立金が必要である。ローンの保証料もいる。毎年、固定資産税・都市計画税を払う必要もある。火災保険料もいるだろう。専用庭やルーフバルコニーがあればその使用料もいるだろう。

これらに加え、購入の場合には、価格下落のリスクを抱えなければならないということを忘れてはならない。

ローンの支払いが終わらない内に、その不動産を売却しようとした場合、売買代金がローン残高に満たないということもありうる。実際にたくさんあると言ってよいだろう。売却しても借金だけが残るのである。

この点、賃借の場合、土地建物の価格が安くなれば家賃の下方改定の可能性が高まる。確かに解約すれば(敷金の返還以外)何も残らない。しかし借金だけが残るということもない点は安心である。いくら不動産の価格が下がろうとも(賃借人の故意・過失による建物の損耗を除き)、その負担はすべてオーナーが負うのである。

さらに、経済的環境の変化による価格下落の他、地震の被害による価格下落も切実である。

ただ、悲観的にばかり考える必要はない。

不動産の価格がどんどん上がる可能性も否定できないからだ。そうなれば、賃借人は家賃の上方改定を迫られる一方、購入した人は一定の返済を(固定金利の場合)続けていればよいのである。そして売却すれば、ローンを一括返済して、多額の譲渡所得が生じて税金対策に困る、という嬉しい悲鳴をあげることにもなる。実際にバブル崩壊前には、それが当たり前であったといってもよいのである。

さて、家賃より安いローンなら借りずに買うべきか・・・一概には言えないのである。

東北関東大震災でお亡くなりになった方のご遺族にはお悔み申し上げますとともに、被災者の皆様方にお見舞い申し上げます。


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