BRIEFING.246(2011.04.21)
高すぎなければ「敷引き」は有効−最高裁判決
建物賃貸借契約における「敷引き」については、これまでにも何度か述べてきたところである(BRIEFING.065、066、117参照)。
「敷引き」という用語には、預かった敷金のうちの一部を解約時に差し引く、というニュアンスがあることから、賃借人にとって不当な負担だと考えられがちである。
しかし、その実態は「解約時」ではなく「契約時」であり、「一部を差し引く」のではなく、「返還する金銭と返還しない金銭が最初から決まっている」のである。
「敷引き」を「礼金」や「権利金」と言い換えればあまり抵抗がないだろう。
実際、税法上、これらの扱いには差はない。返還しない約束の金銭を受け取れば、その期の売上げとなるのである。
今回、最高裁は「敷引き」を有効と判断した。妥当な判決と考える。
但し消費者契約法に照らし、高額すぎる「敷引き」は無効とも判じている。これも妥当なところであろう。
しかし、高額すぎる「敷引き」が今時どこにあるだろうか。あったとしても、すぐに市場から退出を迫られるだけである。わざわざ判決で無効とするのもおせっかいとも思えるが、消費者契約法に照らせば、言及しておくべきなのか。
今回の最高裁判決で残念なのは、「敷引き」が「礼金」や「権利金」と実質的には変わりないということに言及していない点が残念である。用語を変えればOKというであってはならない。
また、入居期間によって敷引き割合が逓減してゆく契約がしばしば見られるように、「敷引き」に、短期で賃借人が交代することによる賃貸人の損失を回避する効果があることにも触れるべきであった。