BRIEFING.247(2011.05.02)

今時、監視区域?

国土交通省の首都圏機能移転企画課が今夏廃止されるという。

移転先候補地が選定されてから「失われた10年」を経て、東京一極集中はますます進み、一方で「限界集落」「買物弱者」が生まれるに至っている。あの移転先候補地選びは何だったのだろうか。

ところで、移転先候補地であった栃木・福島地域、岐阜・愛知地域、三重・畿央地域には「監視区域」が指定されていた。

「監視区域制度」は、国土利用計画法に基づく制度であり、土地取引に際して必要な届出の面積要件を引き下げ、その価格や利用目的を把握し、投機的取引を排除しようとするものである。

届出後、「不勧告通知」をもらうまでは売買契約を締結することができない。

監視区域を指定していた市区町村の数は、平成2年4月1日現在で857、同3年で1,136、同4年で1,198、同5年で1,211、同6年で1,174であり、その後は急減している。

不動産に長く関わっておられる方には、あの頃はよかった・・・との印象を持つ方も多かろう。地価が上がって大変だ大変だと言いながら、顔は笑っていたものである。

移転先候補地の監視区域は、平成12年1月に指定され、平成17年までに解除されている。今その市町村に足を運んでも、そこに当時の高揚感はなく、役所のカウンターに候補地関連のチラシが置かれているのを見て、ああそうだったなと思い起こすのみである。

ところで、現在もただ1区域だけ、監視区域が指定されている所がある。今時どこで?

それは東京都小笠原村。空港建設予定に絡んでのことである。昨年1月には5年間の継続がなされたところである。当初の指定は平成2年1月というから、平成バブルの絶頂期といったところであろうか。それから4回目の継続指定となり、計25年間になろうかという長期である。

さて、東日本大震災を経て、首都圏機能移転論が息を吹き返している。

首都圏機能移転企画課の廃止で移転先候補地が白紙になるわけではない。投機的土地取引の監視を怠ってはならない。


BRIEFING目次へ戻る