BRIEFING.248(2011.05.16)

「空き家」は「備蓄」?

総務省の「住宅・土地統計調査」によると、平成20年10月1日現在における我が国の総住宅数は5,759万戸であり、うち13.1%、757万戸は「空き家」である。さらにそのうちの413万戸は「賃貸用」、つまり賃貸のために空き家になっている住宅である。

それには、すぐに、または若干の期間(設備の修理、清掃、入居者の審査等の期間)を経て入居可能と考えられる。

その質や立地を問わなければ、我が国の住宅の「在庫」は十分である。

一方、国土交通省が、東日本大震災に関連して必要としている仮設住宅の戸数は7.2万戸であるから、日本国中に余っている賃貸用住宅の数はその50数倍にも及ぶ。

これを岩手・宮城・福島・茨城の4県に絞ると29万戸に減るが、それでも数としては十分である。但しこれらのうち、いくつかは被災して使えないであろう。家賃や敷金・権利金はどうするのか、収入のない人はどうするのか、それに加えて通勤・通学、コミュニティーの破壊といった問題もあり、ミス・マッチは否めない。

実際、岩手県釜石市が設置を予定している仮設住宅においても、一部の地区で定員割れが生じているそうである。いずれも市の中心部から離れた地区とのこと。

どこでもよいという訳にはゆかない。

しかしせっかくの「在庫」であるから有効に活用したい。

国土交通省は「被災者向け公営住宅等情報センター」を開設し被災者からの入居申込みの地方公共団体等への取次ぎを実施している。これにより、地方公共団体等(地方公共団体、地方住宅供給公社及びUR)の管理・賃貸する住宅と、民間賃貸住宅との情報窓口が一元化され、被災者の方の円滑な入居を支援している。

非効率が批判されている地方公共団体等の賃貸住宅であるが、その意図せぬ「在庫」を「備蓄」として再評価すべきかも知れない。

では、どこに「備蓄」すべきだろうか。住宅は不動産、正に不動の財産であり運搬が極めて困難である。一方で緊急の需要はどこで発生するか予測できないのである。


BRIEFING目次へ戻る