BRIEFING.251(2011.06.13)

織り込み済みの新駅効果

地価の下落傾向が続く中でも、地域要因に改善が見られた地域については、下落傾向が穏やか、あるいは上昇傾向であるといったケースが見られる。たとえば、新駅ができた、道路がよくなった、大規模な再開発が完成した、といった地域である。

実際の取引事例でも確認できるし、当然予測される現象である。平成23年地価公示においても鉄道の開業・延伸に関連する地域等における地価上昇の動きが散見されている。

しかし、実際には新駅が開業しても特に周辺地価に影響なしといった場合もある。

新駅開業によってその周辺の利便性は向上するものの、地価への影響は、新駅の構想、認可、着工、といった段階ですでに織り込まれているからである。

逆に、開業による利便性の向上が期待したほどでもなかった場合には、開業とともに周辺地価が下落することも考えられる。

株式市場において、好決算が予測される企業の株価は決算発表に向けて上昇するものの、発表を確認してすぐに下げてしまうことがある。増収増益であったにもかかわらず。

しばしば見られる現象だが、それは、期待したほどの好決算ではなかったからである。期待が膨らみすぎだったのである。

土地は株式と違い、同じものが毎日多量に売買されている訳ではないし、売買価格も原則として公開されない。したがって、日々の価格変動を正確に観測することはできない。

しかし、同様の「期待の膨らみすぎ」「織り込みすぎ」は考えられる。

一方、賃料についてはどうだろう。

新駅の構想を知って、慌てて周辺の店舗を賃借する人はいまい。慌てて賃借しても実際に利便性が高まらなくては収益は上がらない。賃料の安い内にと思っても、実際に開業で利便性が向上すればその段階で賃料改定(値上げ)の話が出てこよう。

不動産の購入は「先を見越して」、賃借は「今を見据えて」、が大事であり、売買と賃貸借の違い(価格と賃料の違いと言ってもよい)の本質(BRIEFING.242116参照)にも関わることである。


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