BRIEFING.257(2011.09.08)

999年間の地上権

中国の土地所有形態は、原則として国家所有か、労働者等の集団所有である。

このうち都市部の国家所有地は、「期限付き土地使用権」という形で民間へ払い下げられる場合がある。その期間は用途によって異なり、住宅なら70年間、工場なら50年間といった具合である。

一方、イギリスの土地はすべて女王陛下の所有である。

それを分割してその「時間的所有権(リースホールド)」を大貴族が所有、それをさらに分割して大企業が所有、またさらに分割して企業や個人が所有しているという。

その期間は大貴族が999年間、大企業が250年間、企業・個人が99年間の所有(賃貸というべきか)というから長い。しかし、どうせなら割切れる年数にすればいかがかと思うが・・・。

香港は長い間イギリス領であった後、約束通り中国へ返還されたが、この約束も99年間であった。実に長い約束で、よくぞ守られたものと思うが、さらに長い250年、999年とは信じがたい。

日本においても、定期借地権制度(BRIEFING.165参照)があるが、その期間は最長50年間である。なお普通借地権は、正当事由がなければ所有者から更新拒絶ができないという半永久的な借地制度である。

さて、999年間の地上権は、実は日本でも珍しくない。宮城県の「高山国際村」、長野県の「軽井沢」に多いことは広く知られている。多くは外国人が明治期に取得したものである。避暑地に別荘を求めた外国人と、外国人に土地を売りたくない村との調整点であったのだろうか。しかし1000年でなく999年とした意義は分からない。

先般見かけた兵庫県「六甲山」の別荘地の広告にも、残存期間892年間の地上権付きという物件があった。底地を持っているのは神戸市だ。

ちなみに今から999年前と言えば、平清盛生誕(1118年)のもっと前、紫式部が源氏物語を著した(1001〜1005年)少し後。当時の約束が今、履行されるとは考えにくい。

この他、石川県鳳至郡の総持寺周辺には、寺が底地を持つ1000年の地上権が多数設定されているという。また2500年が日本最長(場所は不明)という話も聞く。

だが、アイルランドのアーサーギネス氏がビール工場建設のため結んだ契約は、9000年間のリースだというから驚く。


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