BRIEFING.258(2011.10.13)
渓流沿いの高級料亭跡、廃業でマンションに
高級住宅地の多い兵庫県西宮市、中でも甲陽園東山町は自然環境に恵まれた閑静な住宅地域である。その渓流沿いに高級料亭「播半」はあった。しかし平成17年の廃業後は不動産業者に買い取られ、今ではマンション開発が進められているところである。
周辺住民は開発許可決定の取り消しを求めて提訴したものの、神戸地裁は「許可の要件に関わる規定内容に適合する」としてこれを却下した。原告は控訴の方針である。
さて、この料亭跡地、風致地区で土砂災害警戒区域を含み、戦時中の地下壕、埋蔵文化財、活断層等、開発の妨げが多い上、私鉄の支線の終点から1km強の急坂。しかし容積率200%の第1種中高層住居専用地域のまとまった土地で、希少なマンション適地でもある。
ところで「播半」は谷崎潤一郎の「細雪」にも登場する老舗で、作家や財界人らに愛された著名な料亭であった。2haもの敷地で大部分は森林。マンション開発の是非以前に「播半」の廃業が残念である。
今更仕方のないことだが、何とか残せなかったものか。民間の商業施設ではあるが一種の外部経済を認め、“保護”してもよかったのではないか。
たとえば余剰敷地(建物の敷地として必要な面積を超える部分)については、緑地であるなら固定資産税・都市計画税を減免する。広大な(減免のない)非住宅用地だけに効果は大きい。
これらの敷地の固定資産税評価額は、時価の70%程度と思料される。そして時価は、最有効使用を前提として把握される価格、おそらく容積率いっぱいに共同住宅敷地として利用することを想定した価格であろう。その価格で課税は酷である。
目一杯利用すればよいのに好きで放置している・・・と切り捨てるべきではない。
一方、市の減収分は、周辺地域の税率アップで補うことが考えられる。緑を残す人には税の減免を、その外部経済に浴する人には相当の負担を課すのだ。
大邸宅の緑地に適用してもよい。
何で狭小な住宅用地の税を上げて、広大な庭の税を下げるのかという批判はあろう。が、その緑は地域の空気浄化や温暖化防止に資する共通財産と考えることができ、延いては地域の価値の向上につながるものとなろう。