BRIEFING.26(2002.3.14)

鑑定評価における建物修繕費の目安

不動産鑑定評価において建物の修繕費の査定を必要とする場合には、次の2つがある。

@収益価格を求める際の純収益の査定に当たって総費用を求める場合
A積算賃料の査定に当たって必要諸経費等を求める場合

建物の修繕費は上記@の総費用、Aの必要諸経費等を構成するものであり、一般には、(ア)年間総収益、または(イ)建物再調達原価、に依存して決まる傾向があると考えられている。そして、その修繕費率は、(ア)に対して5〜6%、(イ)に対して1%程度が一般的目安と思われる。

ところで、現実に必要になるであろう修繕費は1つであり、それが(ア)(イ)のいずれから求めても概ね等しい数値が算出されなければならない。しかし現実には、(ア)が土地建物の価格と関係が深いのに対し、(イ)は建物のみの価格と関係が深いと考えられる。修繕費の実態はどちらであろうか。

さて、今、価格100の土地建物(新築)を想定し、土地建物の価格内訳を変化させて、(ア)(イ)それぞれから修繕費を試算してみる。修繕費率はそれぞれ(ア)に対して5%、(イ)に対して1%とした。総収益は、土地に対して5%、建物に対して15%の粗利益率を乗じて求めることとした。

(1)土地価格 60 50 40 30 20 10
(2)建物価格=(イ) 40 50 60 70 80 90
(1)+(2) 100 100 100 100 100 100
(1)×5% 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5
(2)×15% 6.0 7.5 9.0 10.5 12.0 13.5
総収益=(ア) 9.0 10.0 11.0 12.0 13.0, 14.0
修繕費((ア)×5%) 0.45 0.50 0.55 0.60 0.65 0.70
修繕費((イ)×1%) 0.40 0.50 0.60 0.70 0.80 0.90

なるほどかなり近い金額が算出された。しかし土地建物割合が偏るほど誤差は拡大する。そして粗利益率を土地0%、建物20%としてみれば、2つの修繕費が完全に一致することがわかる。

不動産の個別性は強い。したがってその修繕費の査定に当たっては、その実態を個別的に分析検討し、時間と費用が許すならばエンジニアリングレポ−トを活用し、安易に一般的な修繕費率を採用してはならないことは言うまでもない。


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