BRIEFING.263(2011.12.06)
条例による「上書き権」
憲法第49条・・・「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。」
地方自治法第14条第1項・・・「普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第2条第2項の事務に関し、条例を制定することができる。」
以上の通り、地方公共団体が法律に反する条例を定めることは原則としてできない。そして、それを定める権利を「上書き権」と呼ぶ。
これに関しては古くから論争があり、最近では兵庫県芦屋市の「豪邸条例」がある。
建築基準法第53条の2第2項は、「200uを超えない範囲で」建築物の敷地面積の最低限度を都市計画で定めることができるとしているにもかかわらず、芦屋市では、六麓荘町では400u以上、という条例を作ってしまったのである(BRIEFING.128参照)。
芦屋市六麓荘と言えば全国に知られた豪邸街。400uといった狭小な(?)敷地の家は見あたらない。庶民を排除するつもりか!という批判もあり、良好な環境を守るためには必要!という賛成意見もありといったところである。
これが違憲か否かは宙ぶらりんのままである。
さて、東日本大震災復興特別区域において「上書き権」が認められそうだ。同特区法案は、政令・省令について条例による上書きを認めているが、法律についてもこれを認める方向で検討されているという。
「唯一の立法機関である国会を超える権能を自治体に与えるのは違憲」というのが内閣法制局のこれまでの見解であるが、どうなることか。
確かに、国会で決めたことをひっくり返してよいのなら、当市の企業の法人税は非課税とか、農地の宅地転用はすべて届出でOKといった条例ができてしまうかも知れない。
なお、同特区法案では、上書き条例が提案された場合、まず国と地方とで協議し、それが整えば国会に提出されて審議され、議決されてやっとOKとのことである。したがって、国や他の地方公共団体の利益を奪うようなものは許されないだろう。
が、このような条例は、程度はともかく相対的に国や他の地方公共団体の利益を奪うことになる。またそうでなくては復興の後押しにはなりえない。結局はそのさじ加減が重要ということになろう。
政府や国会議員からは出てこない、地域の実情に合った提案が出てくることが期待される。