BRIEFING.268(2012.01.26)

地価連動国債で持家・借家のリスクヘッジを(2)

借家住まいの刈田さんにとって、今後もし地価の上昇が起これば、住宅が買えなくなるかも知れない。そこで、預金に代えて少しずつ地価連動国債を積み立て、購入に備えるとよい。借金して地価連動国債を買っておいてもよい。

それにより、地価が上昇しても預金の目減りが防げる。逆に地価が下落すれば地価連動国債が目減りしまうが、住宅価格も下がって買いやすくなるはずである。

持家を買った勝田さんにとって、今後もし地価の下落が起これば、住宅を売っても債務だけが残る状態になるかも知れない。そこで、地価連動国債を空売りしてローンの繰り上げ返済に充てるとよい。地価連動国債の買戻し義務と、ロ−ン債務を入れ替えるのである。

地価が下落したら、住宅の値下がりは痛いが、空売りしていた地価連動国債を安く買い戻すことができる。逆に地価が上昇すれば、持家の資産価値は高くなるが、将来高い地価連動国債を買い戻さねばならない。

地価の上昇・下落は、国の税収の増減につながることが予想されるため、償還財源の確保もしやすいのではないか。

では、地価連動国債の「地価」を何を基準にして決めるべきだろうか。

ところで、日本で物価連動国債が機関投資家向けに発行されていることはあまり知られていない。欧米諸国でも発行されていいるが、日本の財務省の場合「物価」は全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数)を指標としている。

地価にはこれに代わる指標が見当たらない。

東証住宅価格指数があるが、これは首都圏の中古マンション価格指数であるし、リピート・セールス法(BRIEFING.250参照)の欠点も抱えている。リート指数も住宅地の地価の指標ではない。

国土交通省の地価公示価格も、市場が形成した価格ではなく、この手の指標として活用することには馴染まない。

また、そもそも地域によって地価の変動傾向に違いがあるため、地価連動国債を空売りして住宅を取得し、もしも一般的な「地価」が上昇したのに取得した住宅のみ値下がりした場合、地価連動国債の買い戻し価格の上昇と併せてダブルパンチとなってしまう。

他にも地価連動国債には様々な問題があろう。しかし持家政策の背景にあった土地神話が崩壊した今、デフレになったら知りません、では、チョット無責任なような気がする。


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