BRIEFING.275(2012.04.09)

不動産の鑑定評価額に取引に係る諸費用を考慮すると・・・

不動産鑑定評価においては、不動産の取得に係る仲介手数料や、登録免許税、不動産取得税、消費税、売買契約書の印紙税などの諸税を考慮しない。

それは、必ずしも不動産の取得を想定して評価をするわけではないからである。

確かに、これからその不動産を取得する人にとっては、先に述べた費用も考慮しておかなければならない。その不動産を取得するためには避けられない費用だからである。

しかし、これからその不動産を譲渡する人にとっては、仲介手数料や印紙代は必要であるが、他のものは必要ない。

また、その不動産を保有していて今後も保有し続ける人にとっては、前述の費用は考える必要がない。

不動産の鑑定評価額は原則として、売主、買主、保有者、すべてに共通する価格であるから、これらの費用を考慮しないこととしていると考えられる。

もしこれらを考慮するなら次のようになる。

@取得しようとする人にとっては加算(追加的支出)
A譲渡しようとする人にとっては減算(手取りの減少)
B保有しようとする人にとっては無関係

土地1億円(固定資産税評価額7千万円とする)、建物1億円(同6千万円とする)合計2億円の不動産の取引に際し必要な経費を試算してみる。なお煩雑さを避けるためここでは消費税を考えない。また建物は住宅以外とする。

印紙税・・・・・8万円(売主・買主とも)
仲介手数料・・・2億円×3%+6万円=606万円(売主・買主とも)
登録免許税・・・土地7千万円×1.5%=105万円、建物6千万円×2%=120万円
不動産取得税・・土地7千万円÷2×3%=105万円、建物6千万円×4%=240万円

合計は1,184万円(売主は614万円)となる。

買主にとっては2億円+1,184万円、売主にとっては2億円−614万円となる。

両者の差は、2億円に対し8.99%にもなる。


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