BRIEFING.283(2012.08.02)

則らない鑑定評価?

「不動産鑑定士が不動産に関する価格等調査を行う場合の業務の目的と範囲等の確定及び成果報告書の記載事項に関するガイドライン」(国土交通省)によると、「価格等調査」とは「不動産の価格等を文書等に表示する調査」をいう。このガイドラインには、取り扱いに関する実務指針も示されており、これによると「価格等調査」は次の2つに分けられる。

@不動産鑑定評価基準に則った鑑定評価
A不動産鑑定評価基準に則らない価格等調査

これがどうもスッキリしない。なぜならば、B則らない鑑定評価、C則った価格等調査はどこへいったのかという疑問が湧くからである。

  則った 則らない
鑑定評価   @   B
価格等調査   C   A

仮に、Bはありえないものであり、C=@であるとすれば、つまり「価格等調査」のうち、則ったものを「鑑定評価」と言うとすれば、次のように整理すべきである。

@不動産鑑定評価基準に則った価格等調査(鑑定評価)
A不動産鑑定評価基準に則らない価格等調査

これでスッキリする。しかしこの整理では誤解が生ずる。

それは、則ったから「鑑定評価」、則らないならただの「価格等調査」という訳ではなく、まず、鑑定評価かどうかという判断(則るかどうかに係わらない)があり、鑑定評価である場合には、原則として則らなければならないと考えると分かりやすい。

不動産の鑑定評価に関する法律第3条には、不動産鑑定士の業務が規定されており、その第1項には「不動産の鑑定評価」が、第2項にはいわゆる「隣接・周辺業務」について記載されている。そして同第2条は「不動産の鑑定評価」を「不動産の経済価値を判定し、価額に表示すること」と定義づけている。「鑑定評価」か否かはこれによって決し、「鑑定評価」であれば原則として則る必要がある。

そしてガイドラインが例外的に認める「則らない(1項の)鑑定評価」が「則らない価格等調査」と理解される。これを「則らない鑑定評価」と言ってしまえばスッキリするのだが・・・。

従来、則れば「鑑定評価」、則らないものは「意見書」「調査報告書」とされ、この後者が「則らない価格等調査」と理解されがちであるが、この考え方が否定されたことは重く受け止めなければならない。

なお、以上が国土交通省や日本不動産鑑定士協会連合会の見解に沿うか否かは確認ができていないことを申し添える。


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