BRIEFING.286(2012.09.13)

尖閣諸島の「市場参加者」

国が購入した尖閣諸島(石垣市字登野城)3島の地番、地積等は次の通りである。

魚釣島 2392番 3,641,983u
北小島 2391番  258,842u
南小島 2390番  324,628u
合 計   4,225,453u

大阪市の最小区・浪速区(4.37ku)とほぼ同面積、東京都の最小区・台東区(10.08ku)の半分弱と言ったところである。東京都の式根島(3.69ku)や青ヶ島(5.98ku)と比較すればイメージしやすい。沖縄県の竹富島(5.42ku)、兵庫県の家島(5.46ku)の方が分かりやすいかも知れない。ちなみに関空1期島は5.15ku、2期島は5.45kuである。

売買価格は20億5,000万円と報道されており、単価は485円/u。波が洗う海岸部や急峻な山岳部が多いため、平地の単価としてはもっと高くなるであろう。

ところで、一般の不動産市場には多くの売主・買主が存在する。ここで「多くの売主」とは「代替性のある多くの不動産」と言い換えてもよい。つまり、この土地がほしいけど、あの土地でもよいという関係にある不動産がいくつもあり、価格とのバランスも考慮して買主がそれらの中から1つを選択することができる市場である。一方、売主にとっても買主を選択できる、すなわち最高価格を提示してくれる買主に売ることができるのである。

尖閣諸島の場合はどうだろう。

国が「20億は高いから違う島にしておこう」というはずはない。また売主も「いやなら他の買主を当たってみるよ」というつもりもない。

市場は限定された買主・売主で形成されているのである。

ただ、道路用地の買収等と同様、限定された市場であっても、合理的な市場を想定して正常価を求めることは可能かも知れない。そうすると、資源開発を目論む企業や国家、機を見て転売を企む投資家、といった市場参加者が見えてくる。同一需給圏は全地球である。

しかし尖閣諸島は、周辺国の脅威という特殊な個別的要因を抱えている。価格の妥当性検証は、市場の閉鎖性のみならず、その不動産そのものの抱える要因により、極めて困難なのである。


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