BRIEFING.292(2012.12.13)

都市に観察される「ミニ城下町」

都市において、都市計画や行政の誘導に寄らず、ある施設の周辺に、ある特定の業種の集積が観察されることがある。たとえば次のようなものである。

@総合病院周辺・・・薬局
A裁判所周辺・・・・弁護士事務所

@はその施設へ来た人の利便に供し自らの商売につなげようというもの、Aは仕事上自らがその施設へ足を運ぶ必要があるというものである。

昔の城下町や門前町の周辺商店は、その両方の性格を持つものと言えよう。お城へ来る役人や他の商売人を商売の相手とする(@)とともに、自らお城へ御用聞きに伺い、納品に出向く(A)。

芝居小屋とその周辺飲食店・物販店は@のタイプだ。

大規模ショッピングセンターに見られるシネコンと小売店舗の関係は、芝居小屋と周辺店舗とを計画的にセットにしたものであろう。妻の買物に付いてきた夫と子供に映画を見てもらおうという逆の狙いもあるだろう。

大規模工場周辺の企業城下町においては、@のタイプとして出張者向けビジネスホテル、接待用飲食店、Aのタイプとして下請け企業がある。

他にAのタイプとしては、法務局と司法書士・土地家屋調査士事務所の例があげられる。両士業は頻繁に法務局へ足を運ぶ必要がある。

他に面白いものとして、遊技機商業協同組合とパチンコ機メーカーや販売会社という例もある。東日本では台東区東上野、関西では浪速区元町にその集積が見られる。組合と各社とは中古パチンコ機に貼付する「確認証紙」の発行等でAのタイプの関連がある。

さて、こうして出来上がった「ミニ城下町」において、その中心施設である「お城」が移転・廃止等となった場合、集積した特定業種は大変である。

実際、近年の法務局統廃合の影響は著しい。法務局がなくなった後もその周辺に軒を並べる老舗司法書士事務所は、何か手持ちぶさたに見える。

停止した原子力発電所周辺のビジネスホテルもガラガラだと言う。

城下町の運命はお城次第である。


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