BRIEFING.297(2013.02.13)

専有部分の状態と効用比

分譲マンションや再開発ビルは、いくつかの専有部分からなっており、各専有部分の所有権には、原則として共用部分の共有持分と敷地利用権が付随している。不動産鑑定評価基準では、このような1個の専有部分を「区分所有建物及びその敷地」(BRIEFING.158参照)と呼んでいる。

そしてその積算価格は、その専有部分を含む「一棟の建物及びその敷地」の積算価格に、当該専有部分の効用積数割合(配分率)を乗じて求められる。

効用積数割合とは「一棟の建物及びその敷地」に占める1個の専有部分の価値の割合であり、効用積数は、個々の専有面積にその「効用比」を乗じたものである。

「効用比」(BRIEFING.118参照)はその専有部分の階層、位置、用途の他、内装、設備等を考慮して査定される、専有部分の単価のようなものである。

さて、ある高級分譲マンションの積算価格は、外観と平面図から「1棟の建物及びその敷地」で20億円、ある1室の効用積数割合は2.5%と査定され、その積算価格は20億円×2.5%=5千万円、と求められた。

その上で内部を見ると、内装はめちゃくちゃ、設備はトイレ、浴槽、キッチン、エアコン、すべて損壊状態で、標準的な仕様に復旧するには1千万円はかかると言う。

この場合の修正方法としては次の2つが考えられる。

(1)20億円から1千万円を控除し、効用比も下方修正する。
(2)5千万円から1千万円を控除。

(1)は「一棟の建物及びその敷地」の価格から修正してゆこうというものだが、効用比を如何ほどにすればよいかピンとこないので、結論を睨んで以下のように効用積数割合が逆算され、効用比も修正されるものと思われる。大変厄介である。

(5千万円−1千万円)÷(20億円−1千万円)≒2.01%

この場合、面倒だからと総額をそのままにして、その1室の効用比のみ下げると、結果的に他室の価格が上がってしまう点に注意が必要だ。

その点(2)は分かりやすいし正直だ。ただ「1棟の建物及びその敷地」の価格はそのまま放置されるという欠点がある。

しかし、実務上、他のすべての専有部分を見ることは不可能であるから、他の専有部分は(階層、位置、用途を除き)すべて標準的、と想定するのが一般的である。つまり「1棟の建物及びその敷地」の価格は、そもそも想定と割り切るべきなのである。


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