BRIEFING.298(2013.02.22)

故障した設備の更新費用、評価額から控除?

ある小規模ビルは築10年の10階建てで、各階1テナントの事務所ビルである。

このビルの鑑定評価に際し、各階2台のエアコンのうち、6階の1台が故障していることが判明した。修理は困難で、取り替えた方がよいとのこと。

そしてその費用はおよそ100万円だという。

ではその費用をどの段階でどのように評価額に反映するべきだろうか。

@積算価格から控除
A積算価格、収益価格それぞれから控除
B積算価格・収益価格調整後の価格から控除
C控除の必要なし

Cは意外かも知れないが、以下の論拠による。

●積算価格には経過年数や観察から減価修正がなされており、すでに折り込み済み。
●収益価格にも修繕費が計上されており、設備の修繕費や更新費用は折り込み済み。
●一定の故障は想定の範囲内。通常のライフサイクルの一場面に過ぎない。

たまたま今、1台の故障が顕在化しているが、今、壊れていなくても次々と壊れるものがでてくるのが普通だ、ということである。すべての設備が様々な程度で劣化している状態の中で、それは想定の範囲内なのである。

すべての設備の劣化の程度を調査せずして、偶然認識した故障を取り上げて格差を付けるのはいかがなものか。設備の評価は、故障しているかいないかの2区分だけでなく、様々な状態のものが混在している。故障しているもの、故障寸前のもの、故障しそうなもの、当面大丈夫なもの、新品同様のもの・・・。

原価法の減価修正、収益還元法の修繕費計上、これらはそういった設備の状態を、総括的に評価する手段と言うことができる。

では、通常以上の劣化、想定外の不具合が観察される場合はどうか・・・。やはり基本は減価修正(原価法)と修繕費(収益還元法)の見直しにより対応すべきだろう。そして、当該劣化・不具合の修繕費・更新費の見積額でウラを取る、と言うのが実務上の対応だろう。

但し、その修繕・更新によって、通常以上の性能の回復が予想される場合、それらの費用の一部が減額される程度の減価修正、修繕費の見直しに止めるべきである。壊れた設備を中古の設備に「更新」する、というイメージである。


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