BRIEFING.299(2013.03.04)

固定資産の減損で開発法?

固定資産の減損とは、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態であり、減損処理とは、そのような場合に、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理である。

この減損による損失の測定基準としては、回収可能価額という概念が用いられ、回収可能価額は、@正味売却価額、A使用価値 のいずれか高いものとされている。

そして、固定資産が不動産である場合、その正味売却価額は不動産鑑定基準における正常価格として求められる。

ところで、固定資産たる不動産を保有する企業は、それを開発して分譲しようとは考えていない。

そうすると、この企業がその不動産の正味売却価額を算定する場合、開発・分譲を想定することに違和感がある。帳簿上固定資産としておきながら、実は強制評価減のある販売用不動産ではないのかと指摘されないだろうか。

この点「固定資産の減損会計における鑑定評価の留意事項」9−3(1)は「固定資産の減損に関する不動産の鑑定評価においては、原則として、原価法、取引事例比較法、及び収益還元法を適用して積算価格、比準価格及び収益価格を求め、これらの試算価格を関連づけて鑑定評価額を決定する。」と述べている。

不動産鑑定評価の価格を求める手法には、これら3手法の他、開発法がある。対象不動産が広大な土地である場合、区画割りして一戸建住宅用地として分譲、あるいはマンションを建設して分譲することを想定して、デベロッパーの目線で土地の価格を評価する手法である。販売用不動産の評価に当たっては重視すべき手法である。

前述の留意事項にも開発法への言及がないのは固定資産であることへの配慮であろうか。

しかし、正常価格は市場において形成される価格である。売手(所有者)の主観的価格ではない。固定資産の評価にも、開発法は(それに適した不動産であるなら)大いに適用すべき手法である。

老朽賃貸ビル(固定資産)が売却され、跡地に分譲マンションが建つことは珍しくない。工場(固定資産)が売却され、建売住宅地になることもよくある話である。その際の価格は買手の価格であろう。正味売却価額の算定に際しては、売手(現下の所有者)の使用方法に基づく価格は無視してよい。

但しこうして求められた正常価格が、前述の「使用価値」をも上回るようだと、なぜその不動産を売却して新規投資や配当に回さぬか、という株主の問いに答えねばならない。


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