BRIEFING.301(2013.04.08)

固定価格買取制度の安心と不安

一戸建住宅の屋根や工場の屋根に、次々と太陽光パネルが見られるようになってきた。企業や地方公共団体が、所有する遊休地にメガソーラーを設置する例も目立つ。

東電、関電等の電気事業者には、このような再生可能エネルギーによる電気を、国が定める価格で一定期間買い取ることが義務づけられており、電気を売る側(「特定供給者」という)にとっては投資回収の見込みが立てやすく安心である。

例えば、10kw以上の太陽光発電の平成24年度買取価格は42円/kwhで、買取期間は20年間である。25年度には若干引き下げられる見込みであるが、それは24年度の契約分にまで遡及するものではない。

しかし、将来、原油価格の上昇等で一般の電気代が大きく上がった場合、42円/kwhでは、特定供給者にとって面白くない。逆にシェール・ガスやメタン・ハイドレードの利用等で電気代が大きく下がった場合、電気事業者にとって面白くない。

そこで「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」では、第3条第8項で「経済産業大臣は、物価その他の経済情勢に著しい変動が生じ、又は生ずるおそれがある場合において、特に必要があると認めるときは、調達価格等を改定することができる」と、手当てがなされている。

経済産業省の「モデル契約書」第1.4条第1項にも「法第3条第8項の規定により、本契約につき適用される調達価格が改定された場合には、かかる改定後の調達価格によるものとする」旨が記されている(ちなみに条数には小数が使われている)。

但し「これは急激なインフレやデフレのような例外的な事態を想定」(環境省のQ&A)したものであり、借地借家法が、第11条(地代等増減請求権)や第32条(借賃増減請求権)で地代家賃の増減を想定しているのとは少し違うと考えられる。

20年間もの固定は、安心でもあり不安でもある。

また、太陽光パネル設置目的の土地または屋根の賃貸借は、借地借家法の対象外であるから、同法による賃借人保護がなく、土地または建物の所有者が変われば、賃借人は新・所有者に対抗できないという点には留意が必要(土地については賃借権の登記可能。屋根ではそれも不可)である。20年間の内には所有者の変更も十分にあり得る。

また民法上の借地借家期間は最長20年間で、買取期間ぎりぎり(工事期間を含めば足りない)である。20年後、パネルの寿命はあるのに、契約終了となれば資源が無駄になる。環境への負荷が増えることになれば法の趣旨にも反しよう。


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