BRIEFING.302(2013.04.15)

PMLの「475年に1度」って?

不動産の証券化に際し、建物の地震に対するリスクが強く意識されるようになり、その度合いの数値化が求められている。

PML(Probable Maximum Loss)は、予想最大損失率と訳され、対象となる建物が地震に対して負っているリスクを数値化したものである。

その算出方法は統一されておらず、国や業界により異なるが、日本の不動産証券化事業においては「対象施設あるいは施設群に対し最大の損失をもたらす再現期間475年相当の地震が発生し、その場合の90%非超過確率に相当する物的損失額の再調達原価に対する割合」(不動産投資・取引におけるエンジニアリング・レポート作成に係るガイドライン)をPMLとしている。

「再現期間」とはあることが平均してどれくらいに1度起きるかを表した期間である。

「90%非超過確率」とは「10%の確率で予想損失額を超える可能性がある」(同)ことを見込んでいるという意味で「90%信頼性水準」とも言われる。

ではなぜ「再現期間475年」なのだろうか。切りよく500年ではまずいのか。

実はこれ、50年間で10%を超えて起こる事象の発生確率に等しいと言う。そして、50年間というのは新築建物の耐用年数のザックリしたところという訳である。

これを検算してみると・・・

まず、1年間に1度発生する確率(再現期間の逆数)を「P」とすれば、

それが1年間発生しない確率は「(1−P)」であり、

それが50年間発生しない確率は「(1−P)50」である。

そうすると、50年間に1回以上発生する確率は「1−(1−P)50」、

そしてそれが10%とすれば「(1−P)50=90%」、

これをパソコンで解くと「P≒0.2105%」が求められる。

そして「0.2105%≒1/475」という訳である。

先般上場されたある不動産投資信託の目論見書では、PMLについて次のように記載がある。

「物件の想定使用期間(50年)中に、想定される最大規模の地震(50年間において10%の確率で発生する可能性のある大地震=再現期間475年に一度の大地震)によりどの程度の被害を被るかを、損害の予想復旧費用の物件の再調達価格に対する比率(%)で示しています。」

「475年に一度」ではピンとこないが「50年間で10%を超える」なら地震に対するリスクが何となく分かるような気がするがいかがだろうか。


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