BRIEFING.309(2013.07.16)

中古一戸建住宅の評価

中古一戸建住宅が、流通市場において築20〜25年程度で価値0と評価されることが知られている。その原因として次のようなことが思い当たる。

@通常予想される程度の不具合は受忍しなければならない。
A契約で売主の瑕疵担保責任が緩和・免責される場合が多い。
Bリフォームするのが面倒だし費用と完成度に不安がある。
Cリフォーム工事期間中の住まいの確保が困難である。
D銀行の担保評価が低く融資額が少ない。
E住宅用建物の法定耐用年数が短い(木造で22年)。
F一度人の手垢のついた物はいや。

@Aにより、買主は慎重・保守的な評価をしてしまう。BCにより、買主は購入を避けてしまう。Fは気分の問題、一度袖を通せば古着と言うわけだ。なおDEは市場の実態から導かれたもので鶏と卵の話。原因とは言い難い。

そうすると、原因は@Aの瑕疵説、BCの面倒説、Fの手垢説の3つに分類され、これらが中古住宅の価格を引き下げているものと考えられる。

さて、国土交通省は、中古一戸建住宅の「適正な価格」を算出するため、新しい評価基準を検討しているという。

これは「中古住宅の流通促進・活用に関する研究会」の報告書(平成25年6月26日)の「原価法を抜本的に改善し、建物評価の適正化を図ることが必要」といった提言を踏まえてのものと思われる。

この「建物評価の適正化」の詳細はこれからの話であるが、市場に成り代わっての評価である点を忘れてはならない。20年や25年で価値なしというのも、現実の市場において観察された現象、誰に誘導されたものでもない。軽視してはならない。

特に、費用をかけてリフォームしたからその分、価値アップという考えは捨てるべきだろう。中古は中古、お化粧しても大事なのは本体である。人為的評価額を強要することは市場の縮小につながる。まずは、瑕疵・面倒・手垢の3つの問題を解決すべきである。

瑕疵・面倒の2問題に対しては、インスペクション、瑕疵保険、定額制リフォームといったものがある。しかしいずれも新たな、または割高な費用が発生する。これらが評価額の上昇分を食ってしまわないよう知恵を搾らねばならない。

そして、手垢問題についても何らかの解決策が望まれる。案外これが曲者かも知れない。


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