BRIEFING.31(2002.5.13)

短期賃借権保護制度の改善案(1)

抵当不動産の短期賃借権は、抵当権に遅れるものであっても競売の買受人に対抗力を有する。この短期賃借権保護についての諸問題は、総合規制改革会議の答申で指摘されるまでもなく、これまでにも議論されてきたことであり、いずれ改善されなければならない問題と認識している。

これに関し、同制度の改善案を私案の試案ながら以下に述べる。

@の結果、賃借人は、敷金返還請求権や賃料の前払いを買受人に対抗できなくなる。賃借人に酷なようだが、抵当権者が差押えの時期を更新期の直前になるようコントロールすれば結局対抗できなくなるので、さほど酷とも言えまい。

Aは、賃借人に敷金返還請求権をあきらめてもらう代わりに、6ヶ月間のフリーレントを与えようというものである。場合によってはこの間に両者が協議して新たな敷金・賃料等を定めて新たな賃貸借を開始するかも知れない。そうならなくても、6ヶ月あれば引っ越し先を見つけることが可能であろう。
そしてこれは抵当権に遅れる長期賃借人(対抗力なし)にも認めるべきである。

Bの共益費等の金額については、買受人が実際に継続的に負担する管理費用と考えればよい。但し一棟のビルのごく一部にのみ賃借人がいる場合に、その全部の管理費をその賃借人に負担させるのは酷であるから、面積按分ということになろう。

Cは賃借人に、賃借人としての管理を求めるもので、使用貸借の場合より厳しいものと理解すべきである。建物の維持修繕は買受人の義務とすべきだろう。

DはCを補完するものと言えるが、「原状」の認識が問題となる。この場合「原状」が公的な記録に残っている方が良いので、執行官の現況調査の日とすべきであろう。買受人は現況調査報告書をもとにその価値を把握しているであろうから、契約始期にまで遡る必要はない。

次回はE〜Fを追加する。


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