BRIEFING.310(2013.07.22)

被災地借地借家特措法で「被災地短期借地権」

借地借家法は、借地権・借家権についていくつかの類型を揃えている。

●借地権については・・・
@普通借地権(第3条以下)
A定期借地権(第22条)
B事業用定期借地権(第23条第1項)
C事業用定期借地権(第23条第2項)
D建物譲渡特約付借地権(第24条)
E一時使用借地権(第25条)

●借家権については・・・
@普通建物賃借権(第26条以下)
A定期建物賃借権(第38条)
B取壊し予定建物賃借権(第29条)
C一時使用借家権(第40条)

これらに加え、先般成立した「大規模な災害における借地借家に関する特別措置法」により「被災地短期借地権」が加わった。借地借家法そのものには出てこないものの、この新法により新たな借地権の類型が定められたと理解できる。

それは、特定大規模災害時の政令施行日から2年以内に限り、公正証書等で存続期間5年以下、かつ更新や建替えによる延長がない旨を定める借地権である。借地借家法の強行規定の一部を排除することができるのである。

土地所有者の借地権設定の負担を軽減し、暫定的な土地需要(仮設住宅・店舗等用地)に応えることができる。

これに伴い、従来の優先借地権等を定めた「罹災都市借地借家臨時処理法」は廃止されている。

罹災都市法は、阪神大震災(1995年)、新潟県中越地震(2004年)で適用されたが、東日本大震災(2011年)では、法務省が一旦適用の方針を発表しながらその後見送りとなった。借地借家人保護の実益に乏しい上、適用により返って様々な混乱が発生する恐れがある等、地元弁護士会等から反対意見が出たからである。

今回の新法はそれを踏まえたものであり、できれば東日本大震災の前に、と悔やまれる。

この他、借地借家法以外の法律で定められた借家の類型として「終身建物賃借権」がある。「高齢者の居住の安定確保に関する法律」によるもので、賃借人は60歳以上、期間は亡くなるまで、相続不可、バリアフリー住宅、といった借家権である。

借地借家法は民法の特例を定めたものとされるが、そのまた特例と言えよう。


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