BRIEFING.311(2013.08.22)

不動産鑑定評価によって求める賃料の種類の分類

不動産鑑定評価によって求める賃料は、一般的には正常賃料または継続賃料であるが、鑑定評価の依頼目的及び条件に応じて限定賃料を求めることができる。

不動産鑑定評価基準によるこれらの賃料の定義は難解(かつ意味不明)なのでここでは述べないが、簡単に言うと次の通りである。

<正常賃料>
@合理的な市場で、A新たな賃貸借契約に際し形成される、であろう賃料。
<限定賃料>
@併合・分割に係る当事者間で、A新たな賃貸借契約に際し形成される、であろう賃料。
<継続賃料>
@賃貸借契約関係にある両当事者間で、A賃料の改定に際し形成される、であろう賃料。

そして、正常賃料と限定賃料とは新規賃料とされ、継続賃料と大きく区分される。

しかし、限定賃料の継続賃料もあるから、上の区分方法では不満がある。

そこで、下表のように(それぞれの名称はさておき)区分すべきである。不動産鑑定評価基準はウエを区別していない(またはエの存在を失念している)と思われる。

   正  常  限  定
新規 ア 新規正常賃料 イ 新規限定賃料
継続 ウ 継続正常賃料 エ 継続限定賃料

上記分類法を「田の字4区分説」とするなら、次の「継続限定包含説」も考えられる。

それは、継続賃料は正に限定(参加者が賃貸借の両当事者のみ)された市場で形成されるものであるから、限定賃料の1種に含め、賃料の種類をまず大きく「正常」と「限定」に区分しようという考え方である。その上で後者をその原因別(なぜ市場参加者が限定されるか)に区分すればよいのである。

具体的には、併合・分割に係る場合と、賃料の改定(継続)に係る場合、そしてその両方に係る場合である。

「田の字4区分説」は不動産鑑定評価基準の不備を補ったもの、「継続限定包含説」は価格に準じまず正常と限定とに区分するものである。

鑑定評価の手法の違いから、継続を併合・分割の場合と別に扱いたいという実務上の感覚は分からなくはない。しかし、理論的には、合理的な市場か、限定された市場か、という区分がまずあるべきである。

したがって「継続限定包含説」が合理的というべきではないか。


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