BRIEFING.315(2013.10.07)

式年遷宮型土地利用で建て替えに備えよ(1)

今年は伊勢神宮の20年に1度式年遷宮の年に当たる。先頃、内宮・外宮それぞれで「遷御の儀」が行われたことは報道等でご存知のことであろう。なお、出雲大社の60年に1度の式年遷宮の年でもあるが、こちらは「本殿遷座祭」が5月に行われている。

伊勢神宮の内宮と外宮をそれぞれ航空写真で見てみると、新旧2つのちょうど同じ社が東西に並んで見える。全く同じ物を並べて作り、神様に引っ越しいただいてから古い方をつぶすそうで、神様には仮住まいなしに1度の引っ越しで済ませてもらうことができる。

今回の遷宮は東から西、20年後はその逆となる。十分な敷地があって可能なことであり、大変贅沢である。「永続性を実現する大いなる営み」なのだそうだ。

ところで、都市に林立するタワーマンションも、いつしか建て替えが必要となる。合意の難しさは想像に難くないが、仮に組合の総会で建替え決議がなされたとしても、仮住まいの問題もある。数百戸の住人が近隣で一度に仮住まいを捜すのは大変なことだろう。

そこで式年遷宮型土地利用の提案である。

今後新たに一定規模以上のマンションを新築する場合、必ずその敷地内に同規模のマンションをもう1棟建てられるように計画しておくことを義務づける。

数10年後の建替えの際、新棟を建ててから引っ越し、それから旧棟を解体するのである。

両棟は、重なり合わないようにさえしておけば、容積率の超過等の法令違反は問題としないこととする。両棟が並立するのは建替え期間のみであり、同時に両棟に人が住むことはなく、地域の道路・公園・下水道といったインフラに負荷をかけることもないから、問題ないだろう。

両棟の間隔は、施工に差し障りのないぎりぎりでかまわないだろう。建替え期間中だけのことなので、マンションの住民や近隣住民の住環境悪化には目をつぶる。但し地震の際に両棟がぶつからない程度の間隔は必要だろう。いや、制震・免震構造なら、大きな間隔は必要ないか。誰もが飛び移るのを躊躇する程度の間隔でよかろう。

新棟予定地は緑地や駐車場に利用すればよい。

これは、オフィスビルでも使える。小中学校では、グランドに新校舎を建て、それから旧校舎をつぶしてグランドに、ということが実際に行われたかも知れない。

式年遷宮型土地利用は、建物のスムーズな更新を可能とし、副産物として緑豊かな敷地を生み、延いては都市の環境維持に資することとなる。

次回は、鉄道や高速道路といったインフラの更新にもこれの提案を試みる。


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