BRIEFING.329(2014.03.27)

今年の地価公示は「緩和マネー公示」

地価公示法に基づき、平成26年1月1日現在の標準地の価格が官報公示された。

それによると、全国平均の対前年比で、住宅地が▲0.6%(前年は▲1.6%)、商業地が▲0.5%(前年は▲2.1%)で、リーマン・ショック以来6年連続の下落となった。

三大都市圏で見てみると、住宅地は+0.5%(前年は▲0.6%)、商業地は+1.6%(前年は▲0.5%)と、上昇に転じている。6年ぶりのことである。

アベノミクスによる第1、第2の矢が功を奏し、第3の矢への期待も高まっている。

中でも第1の矢「異次元緩和」による「緩和マネー」の影響は大きい。東京五輪開催(2020年)決定もあって、東京都心部のオフィスビルに流れ込み、また、ネット通販の普及を背景に大規模物流施設にも回り、地価の反転に寄与している。

また、低いローン金利を通じて好調が続く分譲マンション需要は、デベロッパ−の用地需要につながった。消費増税が迫ってからは完成在庫の消化が進んでいる。

但し今後は、建築費(資材も人件費も)の上昇と消費増税により、従来の価格水準での供給は不可能である。賃金のベースアップで追いつけるものではなさそうだ。

さて、種々検討し総合的に勘案した結果、地価は「緩和マネー」に支えられていると見た。そこで今年の地価公示を「緩和マネー公示」と名付ける。

但し地方圏では、住宅地、商業地ともに下落幅こそ縮小したものの、依然として下落が続いている。南海トラフ地震による津波への不安がつのる地域もある。今後、生産年齢人口の減少も本格化する中、「デフレ終息」「デフレ脱却」は勇み足だろう。

また、東京電力福島第1原発の事故に伴う避難指示区域では、今も調査が休止されていることを忘れてはならない。

過去5年間の地価公示については次の通りである。右はその前年の主なできごと。それ以前についてはBRIEFING.194072をご参照下さい。

平成25(2013)年 アベノミクス公示・・・日本再生戦略。メガソーラー。
平成24(2012)年 西高東低公示・・・・・復興特区。除染。スマートハウス。
平成23(2011)年 なお書き付き公示・・・エコポイント。IFRS。新・成長戦略。
平成22(2010)年 ショック公示・・・・・政権交代。官民ファンド。空室率上昇。
平成21(2009)年 百年に一度の危機公示・リーマンショック。世界同時不況。


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