BRIEFING.33(2002.7.4)
宅地内の電柱
大規模団地の開発の際、市町村の指導により、宅地の中に電柱を建柱する場合がある。これにより区画街路の幅員が十分に活かされ、交通安全、景観、バリアフリー等の観点からも街の価値が向上するものと思われる。
一方、開発事業者とすれば、大事な売り物の中に電柱があればその宅地の価値が落ち、販売価格が下がって回収できる金額も減ってしまうこととなる。街全体の価値の上昇が認められるとしても、それが特定の宅地の価値の下落分を相殺し得るものかどうかは判断のむずかしいところであろう。
このような団地は、東北地方に多く見られ、首都圏にも見られるが、近畿圏にはほとんど見当たらない。その他の地方ではどうであろうか。
さて、電柱の所有者であるNTTや電力会社は、無償で電柱の敷地を使用するわけではない。一定の土地使用料を毎年宅地の所有者に支払っている。それはいくらであろうか。
NTT東日本等の電気通信事業者の場合、その金額(年額)は電気通信事業法施行令の別表第1で定められている。宅地なら電柱1本につき日本全国どこでも年間1,500円である。そして通常宅地より価格が低いと考えられる田で1,870円だから不思議だ。
電力会社の場合は法令で定められておらず、各社で定めている。しかしほとんどの場合前述の施行令別表に準じて定めているようである。東北電力の場合、宅地でも田でも前述の金額であった。ちなみに同社の場合、「土地使用料」とは言わずに「敷地料」と称している。
電柱のほとんどは道路内に建てられているであろうが、この場合もただではない。道路管理者(市道なら市)が条例で定めた道路占用使用料を支払わなくてはならない。ただし多くの市では前述の別表に準じた額を条例で定めているようである。
電柱を道路内に設けるか、宅地内に設けるかの判断に当たり、興味深い例がある。琵琶湖の北東部、滋賀県高月町雨森では、地域の人たちが合意の上、道路上の電柱を各家の敷地内に移してしまったのである。そして水路には鯉を放しその周囲に花を植え、景観の改善に成功している。
電線は地中化するに超したことはない。しかし次善の策としての宅地内電柱は、各地域でどのような評価をうけているのであろうか。