BRIEFING.330(2014.04.03)

対岸の火事か? 続くデータの操作・改ざん事件

LIBOR(London Interbank Offered Rate)は、ロンドン金融市場における銀行間取引金利であり、国際的に指標となる金利だ。住宅ローン金利や金融派生商品の価格算定にも影響を及ぼす。「6ヶ月ライボー」「3ヶ月ライボー」などとニュースでも耳にする。

この金利は、各銀行が自己申告した金利を一定のルールに基づいて集計・算出されるのであるが、その申告に虚偽があり、LIBORが不正に操作されたことが明らかになったのは一昨年のことである。

国内では昨年、JR北海道がレール検査データを改ざんしていたことが判明し、国交省が刑事告発している。

基準を超過していた検査データが、基準内に収まるように書き換えられていたという。

さらに今年になって、製薬会社のノバルティスが降圧剤の臨床研究データを操作していたことが明らかになり、厚労省が同社とその担当社員を刑事告発している。

実際のカルテに記載されていた高血圧患者のデータと、論文に使われたデータに多数の相違があり、故意に操作が行われた疑いがもたれている。

STAP細胞については、報道でご承知の通り、画像の流用(ねつ造と断定)が明らかとなった。万能細胞の根拠となる重要な部分であっただけに影響は大きい。

小学生の自由研究ならともかく、立派な科学者が「やってはいけないことだという認識がなかった」とは・・・。

さて、不動産鑑定評価においても、データは重要である。そのデータとは、アンケート調査によって得られる取引事例等である。

これらはそれぞれ、時点、地域、物、が違う上、再現実験(もう一度市場で売買する)が不可能であることから、その規範性の評価が大変に難しい。また件数が多くなくそれぞれの取引事情が希釈されにくいため、個々に「特殊な事情」の影響を(可能であれば)「適切に補正」する必要がある。それは不動産鑑定評価基準の要請でもある。

しかし「特殊な事情」の程度を客観的に測定することは困難だ。その必要性と困難性との間でもがき苦しむのが不動産鑑定評価の宿命であろう。

「適切に補正」することを求められてはいるが、データの操作は「やってはいけないこと」である。両者は紙一重、前述の諸事件は対岸の火事ではない。


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