BRIEFING.331(2014.04.10)

「最後通牒ゲ−ム」と増分価値の折半

1人の提案者と1人の受諾者がおり、提案者に10万円が与えられたとする。提案者はこれをすべて自分の物としてもよいし、一部を受諾者に分け与えてもよい。但し受諾者がその分割案を拒否すれば両者ともに何ももらえない。10万円はなかったことになる。さて、提案者はどんな提案をするであろうか。

これを「最後通牒ゲーム」と言い、心理学あるいは行動経済学の実験として行われる。

提案者は、受諾者の顔色を窺いながら分割案を提示しなければならない。1万円では拒否されるだろう。3万円ではどうか。4万円ではどうか・・・。頑固者の受諾者なら、半分の5万円でないと拒否するかもしれない。

事実、多くの実験では5:5または6:4といった提案が多いと言う。

さて、200uの無道路地(10m×20m)を所有するA氏、その無道路地と公道との間の帯状の土地20u(間口10m×奥行2m)を所有するB氏がいる。B氏は、この土地の利用方法がなく困っており、何とかAの土地を安く買い取って220uの土地(間口10m×奥行22m)にしたい。でも、断られればそれまでだ。

両土地及び併合後の土地の価格は次の通りとする。

  面積(u) 単価(万円/u) 価格(万円)
200  20,000  4,000,000
 20 100,000  2,000,000
220  27,273  6,000,000
併合 220 200,000 44,000,000
  0  − 38,000,000

このような場合、B氏がA氏の土地を買い取る際の妥当な価格を限定価格と言う。併合によって生ずる増分価値は3,800万円で、これをABに如何に配分するかが限定価格の本質である(BRIEFING.325参照)。面積比、単価比、総額比、買入れ限度額比、いずれがよいのか・・・・。

さて、前述の「最後通牒ゲーム」を念頭に置くと(一般にあまり採用されない)折半法が現実的なのでは、と考えられる。つまり、2,300万円(400万円+3,800万円÷2)だ。

A氏にとっては「400万円の土地が2,300万円で売れて1,900万円の利得」、B氏にとっては「200万円の土地が2,300万円の追加投資で4,400万円の土地になって1,900万円の利得」と言うわけだ。面積や単価に関係は関係ない。

単純すぎて芸がない折半法だが、現実的な落としどころかも知れない。


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