BRIEFING.337(2014.06.23)

賃貸保証人の保証債務に上限設定?

住宅の賃貸借契約にあたり、賃貸人と賃借人の連帯保証人との間で連帯保証契約が締結されることが多い。大概は賃貸借契約書の最後の方に「連帯保証人(以下丙という)は、・・・」とさらりとそれについて記載されており、別途契約書を作成することはない。したがって、連帯保証人に、大変な連帯債務を負ったという認識がなく、まれなことではあるが、忘れた頃に高額な請求をされてとまどうことになる。

貸金の連帯保証契約については、平成16年の民法改正で禁止されたところであるが、建物賃貸借については、一定の必要性もあって今日も有効とされている。

元々、借家の連帯保証人には、滞った家賃の支払いの他、滞った場合に早く出て行くことを促す(または指示する)といったことも期待されていたと考えられる。

さらに、火の用心、近所づきあい、健康といったことにまで関与・助言し、家主の協力も得つつ、賃借人を保護育成・監督指導する人、という感覚だったのではないだろうか。

そこで家主としては、それが十分できる立場の人、具体的には親、長兄、上司といった人物を選んだのである。

もっとも、今時、上司が部下の私生活に口出しするすることは難しい(ましてや非正規雇用だったなら)。また、家主も賃借人の保護育成など考えてはいまい。

借地借家法の基本姿勢が賃借人保護であることも、連帯保証人の必要性に関連する。

ホテルの宿泊代を踏み倒しておいて、もう一泊させてもらうのは難しい。しかし賃貸住宅では事情が違う。誤解をおそれずに言うと、判例では3ヶ月程度までの不払いはOKだ。さらに明け渡しまでには、内容証明付き郵便で督促(証拠を残す)、提訴、判決(契約解除・明け渡し)、確定、強制執行申立て、催告、断行、とその間半年は見ておかなければならない。勝手に荷物を処分して鍵を交換する等の自力救済は許されない。

督促状が届かなかったり、訴状や判決文が送達されなかったりすれば、それを待って公示送達等の手続きも必要となる。盆や正月が挟まるとさらに遅れる。

この点、連帯保証人がおれば「しばらく泊めてやるから早く明け渡せ」と促してくれることが期待される。すべての関係者(代理人弁護士を除く)にとって好ましい解決方法である。

法制審議会は、7月にまとめる民法改正要綱案に、賃貸保証人に無期限の保証債務(包括根保証)を負わせることを禁止する内容を盛り込む予定だという。どの程度のまでを有効とするかは、明け渡しに至るまでの実態を把握し勘案する必要がある。


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