BRIEFING.34(2002.8.5)

自動増額特約のある場合の最終合意時点(1)

継続賃料の鑑定評価の手法には、差額配分法、利回り法、スライド法、賃貸事例比較法がある。

このうち差額配分法においては、前回改定時(最終合意時点)からの賃料と価格時点における正常賃料との差額の調整に重点が置かれる。利回り法においては前回改定時の純賃料利回りが重視され、スライド法においては、前回改定時の純賃料額そのものが重視される。

さて、賃貸借契約において、賃料を数年毎に何%増額するという特約がされる場合がある。近年では見られないが、賃料相場の上昇が予測されたバブル期においてはこのような自動増額特約のある賃貸借契約が、大規模店舗やサブリース目的の事務所ビルの賃貸借において多く見受けられたものである。当初10年間は2年毎にと、自動増額期間を限定している場合もあるが、中にはそれもなく、永久にと理解される場合もある。

その特約は、契約の条件にかかわらず認められる賃料減額請求権を制限するものであり、または事情の変更があるからと、無効だと考えられる場合もあろうが、様々な判例がありここでは触れない。ここでは、賃借人が自動増額特約を甘受し、その後その特約期間が切れた時点における継続賃料の鑑定評価において、最終合意時点がいつであるかを問題とする。

例えば、平成2年からの10年間、2年毎に賃料が自動増額された場合、賃料そのものは勿論、その純賃料利回りや純賃料額も、著しく過大なものとなっていることであろう。それを合意があった従前賃料として差額配分法や利回り法、スライド法を適用し、平成12年の継続賃料を評価すれば賃借人に酷ではなかろうか。


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