BRIEFING.340(2014.07.29)

「ションベン横丁」の火災と道路拡幅

大阪市淀川区の十三(じゅうそう)は、難読地名で知られ、阪急梅田駅から続く複々々線が神戸線・宝塚線・京都線に分かれてゆく駅の名前としても知られている。

本年3月、その十三駅の西改札口近くの飲食店が密集する、通称「ションベン横丁」で火災が発生、36店舗、延べ1,500uが消失した。道路が狭いことに加え、敷地の大部分が大阪市所有の借地であることから復旧は難航している。同駅は類焼を免れたもののいまだに西改札口は閉鎖されたままである。

この地域には、ほぼ南北に「なかすじ」(市道淀川区第2044号線)と「ションベン横丁」(私道・2項道路)が並行し、焼失したのはこの両方に挟まれた帯状街区の大部分である。

「なかすじ」は現況幅員4m程度なのに認定幅員は8m。足りない4mはすべて当該街区側に認定されている。したがって当該街区側で建物を建て替える際には4mのセットバックが必要となる。また「ションベン横丁」は現況幅員2.5m程度で、建て替えに際しては幅員4mとなるよう道路中心線から2mセットバックする必要があるが、反対側が阪急十三駅であるため、当該街区側にのみ1.5mセットバックする必要がある。その結果、当該街区は西から4m、東から1.5mを道路に取られてしまうことになる。

もともと狭小な敷地が大部分であるから、これだけ道路に取られてしまうと再築困難な敷地も出てくる。当然反対は出てくる。また、情緒が失われる、と道路の拡幅自体を疑問視する意見もある。

そこで大阪市は地元に対し「復興に向けたまちの整備のパターン」を例示したところである。これには「なかすじ」を4m(または6m)に見直す、2項道路の廃止、連担建築物設計制度(建基法86条2項)の活用などが示されている。

連担建築物設計制度は、同市中央区の「法善寺横丁」再建で採用された手法であり、多くの敷地群を一つの敷地としてみなして接道義務等を判断する制度である。但し、安全・防火・衛生上支障がないこと、土地の所有者・借地権者全員の同意、市の認定、とハードルは高い。

「ションベン横丁」を含む「十三トミータウン」商店会では認定幅員8mの市道を4mに、といった嘆願を市などに行っていくと同時に市民の支持も訴えている。

一方、戦後、焼け野原となった市有地に、不法占拠同然のバラックで営業し始めたのがこの地域の始まりとも言われ、いまだに地代も低水準だとの指摘もある。

市民の意見、地元のまとまり、そして市の判断が注目される。

「ションベン横丁」の謂われはご存知の方も多いし、大方の想像通りである。しかし「十三トミータウン」を知る人は少ない。またその由来が「十三」を読み替えただけと知る人はもっと少ない。

「トミー」という名称で「ションベン」のイメージを消したかったか・・・。いやそうではない。駅前に立つ「トミー君」は塀に向かって立つ小便小僧で「ションベン横丁」の謂われを今に伝えている。


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