BRIEFING.341(2014.08.07)

建築費上昇に見合う期待賃料上昇率(1)

更地の収益価格は、その土地に最有効使用の賃貸用建物の建築を想定し、その総収益から総費用を控除して純収益を求め、そこから建物に帰属すべき純収益を控除して求められた純収益(土地に帰属すべき純収益)を、還元利回りで還元して求める。

これを土地残余法という。収益還元法の一種である。

新築された賃貸ビルやマンションから生み出される純収益のうち、建物に帰属すべきものを先に控除し、残余の部分を土地の純収益とするのである。建物に帰属すべきものとは、耐用期間にわたって新築費用(設計管理費等を含む)の回収(金利含む)に充てるべき支出と言うことができる。

したがって(同等の建物なのに)建築費が値上がりすればその回収に回す分が増え、その残余、すなわち土地に帰属すべき部分が圧縮され、土地の収益価格は下落することとなる。

一方、将来の賃料上昇を想定すれば還元利回りが低下し、土地の収益価格は上昇する。

では、他の条件を一定とし、建築費の値上がりを容認した場合、どの程度の将来の賃料上昇を想定することで、土地の収益価格が維持されるだろうか。

ここでは次のような小規模オフィスビルを想定し試算してみる。但し、一時金はなしとし、竣工までの未収入期間や建物耐用期間満了後の更地化費用は無視する等、省略した。

土地:1,000u

建物:3,000u(600u×5階)
有効面積:3,000u×80%=2,400u
当初賃料(共益費込):3,000円/月u×2,400u×12月=8,640万円/年
必要諸経費等:8,640万円/年×30%=2,592万円/年
空室率:5%
純収益:8,640万円×(1-5%)−2,592万円/年=5,616万円/年
建築費(設計管理料込):20万円/u×3,000u=6億円
建物の経済的耐用年数:40年間
基本利率:5%
賃料の上昇率:0.5%
還元利回り:5%−0.5%=4.5%
元利逓増償還率:0.05444

土地の収益価格:(5,616万円−6億円×0.05444 )÷4.5%≒5億2,200万円

単価は52.2万円/uである。

次回、建築費を1割、2割、3割アップさせた場合を試算してみる。


BRIEFING目次へ戻る