BRIEFING.348(2014.10.23)

買うか借りるか?−県営プール跡地のホテル事業提案

奈良県は、先頃締め切られた「ホテル事業計画提案競技」に2者からの応募があったことを発表した。

この提案競技は、県営プールと警察署の跡地を活用した「ホテルを核とした賑わいと交流の拠点整備事業」の事業者選定のために行われているもので、2015年末に事業者を決定、2019年度末開業が目標とされている。

さて、応募する事業者は、土地の譲渡を受けるか、借地するかを選択することができる(選択の如何は審査の対象外)。それぞれの条件は以下の通りである。

@譲渡価格代金:120,000円/u
A借地料単価:270円/月u(保証金12ヶ月分)

Aの期間は20年以上70年以内で、50年未満の場合は事業用定期借地権、50年超の場合は一般定期借地権である。

Aの利回りは次のように計算される(保証金の運用利回りを2%とした)。
270円/月u×12月+270円/月u×12月×2%≒3,305円/年
3,305円/年÷120,000円/u≒2.8%

定期とは言え新規賃料としては安いようだがいかがだろうか。ちなみに商事法定利息は6%、民事法定利息は5%である。また「公共用地の取得に伴う損失補償基準細則」による土地(宅地)の使用に係る地代の利回りは6%(林地は5%)、国税庁の定める「相当の地代」も6%である。

応募した2者は取得か賃借か、いずれを選択したのであろうか。

ところでAの場合、借地料の改定方法についての規定もある。毎年4月1日に、正面路線の相続税路線価の変動に比例した改定を行うという(予定されている指定用途地域の変更等による変動は含まない)。

しかしこれでは、ホテル事業の地域貢献が自らの固資・都計税に跳ね返るというジレンマが生ずる。また、事業収益に見合わぬ地価(路線価)の上昇があった場合は酷ではないか(この改定方法が常に有効と認められるとは限らないが)。

このように地価に連動した改定ルールは、バブル期に多く見られた「3年毎に5%アップ」といった無謀なルールよりはよほど合理的であるが完璧ではない。かと言って「甲乙協議の上」だけでは寄るべき規範がない。完全無欠な改定ルールを作ることができればノーベル経済学賞級、いや平和賞級かも知れない。


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