BRIEFING.350(2014.11.17)

併合による増分価値が見込める土地の正常価格

土地は、適当な隣接地を併合取得することにより、両土地別々の価格の合計よりも大きな価値を持つようになることがある。

たとえば、幅員3mの裏道に面している土地と、それと背中合わせの幅員15mの表通りに面している土地が併合されれば、その土地の価格は、併合前のそれぞれの土地の価格合計を上回るだろう。2つの隣接する三角形の土地が併合されることによって正方形になるような場合や、道路に面した土地とそれと隣接する無道路地が併合される場合も同様だ。

このように、併合によって生ずる新たな価値を増分価値と言い、増分価値を適切に両土地に配分した価格は、正常価格に対して、限定価格と言われる(BRIEFING.331325参照)。

では、正常価格には、隣接地併合取得の可能性を一切考慮すべきではないのだろうか。

無道路地ではあるが、その土地と道路との間の幅1mほどの他人地を、少し分けてもらえればよい土地になるのに・・・と言った場合、どうだろう。道路まで30mといった無道路地ならともかく、1mなら何とかなる、と考えるのが普通である。

また、道路まで1mか、10mかで価格が異なると推測されるから、その併合取得の可能性は市場において考慮されていると言うべきであり、評価においてもそうすべきである。

では、その隣接地の所有者の属性は考慮すべきであろうか。属性とは、地方公共団体、株式会社、個人といった性格の違いである。さらに、個人の中でも、実父、親戚、友人、全く知らない人、反社会的勢力関係者等の細分化ができよう。

実際の所、所有者が実父ならもう併合取得したのと同然だ。友人なら若干高くなるだろうが売ってもらえるかもしれない。地方公共団体なら手続きに時間はかかるだろうが払い下げの可能性もある。反社会的勢力の人なら難しい。

ところで、隣接地が墓場やゴミ処理施設といった嫌悪施設であった場合、それは当然土地の正常価格に考慮される。市場が反応するからである。

とすれば、所有者の属性も織り込んだ併合取得の可能性を考慮した価格が正常価格であると考えるべきでる。

では、併合取得を前提として限定価格を求める場合に、先だって求められる正常価格(限定価格を求める場合には必要)にも、併合取得の可能性を考慮すべきなのであろうか。

不動産鑑定評価の新たな論点は尽きない。


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