BRIEFING.355(2015.01.06)

「産寧坂伝統的建造物群保存地区」で原状回復の代執行

京都市は、同市東山区の「産寧坂伝統的建造物群保存地区」の建物に、条例に反して許可なく変更を加え、是正指導にも従わなかった店舗経営者に対し、外観の原状を回復する行政代執行を実施した。この種の行政代執行は全国初という。

産寧坂から二年坂までの区域は、1階部分を店舗とする「むしこ造り町屋」や「本二階建町屋」が連坦する区域である。

「むしこ造り」とは「虫籠窓」のある中2階建建物のことで、「虫籠窓」とは虫かごのように細かい縦格子のある採光・通風のための窓である。中2階の外壁の白壁に付いているのを今でも時々見かける。

同地区の「建築物等の保存整備計画」の表3には「建築物の外観の様式、材料及び色彩等の基準」が細かく定められている。確かにガラス張りのショーウインドーでは基準に合わないのだろう。

この「伝統的建造物群保存地区」は文化財保護法第143条によって市町村が定めるが、中でもこの「産寧坂地区」は同法第144条により文部科学大臣から「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されている地区である。

高台寺から清水寺へ至る道であり、バックに写真を撮れば絵になる八坂の塔(法観寺)もあり、国内外から多くの観光客が訪れる京都でも有数の観光スポットなのだ。

ところで文科相選定の「重要伝統・・・」は平成26年9月18日現在で108地区あり、都道府県別で見ると、石川県が8地区で最多、京都府は7地区である。但し合計面積では石川県の240.5haに対し京都府は464.6haで倍近い。

しかし、最も広い地区を有するのは長野県で、5地区のみだが、そのうちの1つ「南木曽町妻籠宿地区」だけで1,245.4haもあり、全国合計3,759.8haの3分の1を占める大きさだ。

ちなみに最新の選定は宮城県の「田村町田村地区」で昨年9月の選定。同県からは初の選定であった。

さて、産寧坂の針金細工店のホームページによると、店としても市と協議を重ね、お客さんの意見も伝え、様々な提案もしてきたとのこと。実際、店舗の外観に特に違和感を持たない方も多かろう。主観が係わる部分ではあるが、決して下品、派手とは感じない。

ホームページからは、新聞報道からは伝わらない、店主の親日家らしいお人柄も窺える。真摯な話し合いの継続を期待する。


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