BRIEFING.360(2015.03.05)

価格・賃料の同時評価(1)

会社が所有・使用する自社ビルを会社オーナーが買い取り、引き続き会社が賃借して使用するといった場合、その適正な価格及び賃料はいかに求められるだろうか。不動産鑑定評価の手法に基づきその過程を見てみる。

なお、買主のビル取得と同時に売主の賃借権が発生することとなるが、価格査定に当たっては、これを考慮しないこととし、賃料査定にあたっては、新たな賃借人が賃借することを想定する。

いわゆる「オーナーチェンジ」物件なら、賃料等が契約で決まっているのでそれを基礎に価格を査定しなければならないが、本件では、それが決まっておらず、このような場合は会社とオーナーの恣意性を排除することが求められるからである。

ここでは、空のビルの価格を求めることとなる。その鑑定評価の手法は、一般に原価法及び収益還元法である。取引事例比較法は、適切な事例がないことが多く適用は困難である。

原価法では、まず対象不動産を土地建物に分けて再調達原価の査定を行うが、土地についてはそれが困難であるため取引事例比較法によって求める。次に求められた再調達原価に減価修正を行って積算価格を求めることとなる。

収益還元法では、まず総収益を査定するが、その基礎となるのは賃貸事例比較法による比準賃料である。相場の新規賃料と言ってもよいだろう。そしてこの時留意すべきは、積算賃料は求めないということである。これから価格を求めよう時にその価格を基礎に賃料を想定していては「循環」(卵が先か鶏が先か)に陥るからである。

詳細は省くが、その後求められた積算価格と収益価格とを関連づけて鑑定評価額(正常価格)を決定することとなる。

次に空ビルの賃料(新規賃料)を求める鑑定評価の手法であるが、一般に積算法及び賃貸事例比較法である。収益分析法もあるが、多くの場合適用困難である。

積算法では、まず対象不動産の基礎価格を求めるが、それは賃貸借契約に特段の制限がない限り、対象不動産の積算価格である。ここで留意すべきは、収益価格は求めないということである。なぜなら、これから賃料を求める時に賃料を基礎にした価格を関連づけてはやはり「循環」になるからである。

詳細は省くが、この後求められた積算賃料と比準賃料とを関連づけて鑑定評価額(新規・正常賃料)を決定することとなる。

「循環」を排すため、価格評価に積算賃料は出入り禁止、賃料評価に収益価格は出入り禁止と言う訳である。次回検討を続ける。


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