BRIEFING.362(2015.03.19)
平成21〜22年取得土地等の譲渡所得
日本が平成バブルの痛手から立ち直りつつあった平成20年9月、米国リーマ・ブラザーズが連邦破産法11条の適用を申請し破綻、世界経済はどん底へ沈んだ。時の総理はこれを「100年に一度の暴風雨」と表現している。
そこで政府は翌平成21年度の税制改正において、土地の取得を促すある税制の特例を設けた。平成21年〜22年に取得した土地については、これを5年超先に売却した際の長期譲渡所得に1,000万円の特別控除を設けようというものである。
例年、譲渡所得に係る税制改正は、期限切れ特別措置の延長や、適用範囲拡大に関するものばかりであるため、やや目立つ特例であった。
さて、平成21年中に取得した土地は、今年、平成27年1月1日以降の譲渡で5年超となる。5年の判定は、取得日の翌日から、譲渡した年の1月1日現在で判定されるからである。このような国内にある土地等の譲渡益からは、1,000万円を特別控除することができるのである。
ところでこの間、土地の価格はどうなったであろうか。1,000万円の特別控除を使い切るほどの譲渡益は生じたであろうか。
以下では、次の2つの地価公示標準地を例に取り、平成21年と27年に公示価格で更地を取得・譲渡したとして試算した。但し取得費に含まれる仲介手数料・登録免許税・不動産取得税は取得価格の5%、譲渡費用である仲介手数料等は取得費の3%とした。
三鷹−10 (井の頭3丁目) |
豊中−22 (新千里西町2丁目) |
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@取得単価 | 円/u | 560,000 | H21公示 | 256,000 | H21公示 |
A取得価格 | 千円 | 153,440 | @×274u | 72,704 | @×284u |
B取得費 | 千円 | 161,112 | A×1.05 | 76,339 | A×1.05 |
C譲渡単価 | 円/u | 563,000 | H27公示 | 258,000 | H27公示 |
D譲渡価格 | 千円 | 154,262 | C×274u | 73,272 | C×284u |
E譲渡費用 | 千円 | 4,628 | D×0.03 | 2,198 | D×0.03 |
F譲渡益 | 千円 | ▲11,478 | D−B−E | ▲5,265 | D−B−E |
両地点は6年前の価格を上回っている。しかし諸費用を考慮するとまだ譲渡損が生ずる水準だ。
上記条件に基づくと、それぞれ606,200、277,100円/u程度で損益0となる。1,000万円の特別控除を使い切るには、それぞれ643,800、313,400円/uの水準となる必要がある。