BRIEFING.363(2015.03.26)

今年の地価公示は「インバウンド公示」

地価公示法に基づき、平成27年1月1日現在の標準地の価格が官報公示された。

それによると、全国平均の対前年比で、住宅地が▲0.4%(前年は▲0.6%)、商業地が±0.0%(前年は▲0.5%)で、商業地でようやく底を打ったことが分かった。

三大都市圏で見てみると、住宅地は+0.4%(前年は+0.5%)、商業地は+1.8%(前年は+1.6%)となっている。商業地で上昇率がアップする一方で、住宅地は0.1ポイントとは言え上昇率がダウンしている。

地方圏では、住宅地で▲1.1%(前年は▲1.5%)、商業地で▲1.4%(前年は▲2.1%)とまだ下落が続いているものの、いずれも下落幅は縮小している。そんな中、注目すべき地域は、いわき市の住宅地と金沢市の商業地である。その理由は言うまでもないだろう。

都心の商業地は、円安を背景とした外貨、特にアジアマネーに影響を受けていると考えられる。アジアの富裕層が億ションを買い、オフィスビルに投資し、観光に来て爆買いする。そしてそれを見込んだ用地需要が膨んだ。

そこで今年の地価公示を「インバウンド公示」と名付ける。外から中へ入ってきた投資、消費に支えられた今回の地価公示と言える。

しかし生産年齢人口の減少は止まらず、消滅可能性都市も限界集落も空家も増加するおそれがある。労働力のインバウンド(移民)も必要になってくるかも知れない。

なお、東京電力福島第1原発の事故に伴う避難指示区域内の17地点では、今年も調査が休止されている。

過去5年間の地価公示については次の通りである。右はその前年の主なできごと。それ以前についてはBRIEFING.329、194、072をご参照されたい。

平成27(2015)年 インバウンド公示・・・アジアマネー。空家。r<g。
平成26(2014)年 緩和マネー公示・・・・物流不動産。国家戦略特区。
平成25(2013)年 アベノミクス公示・・・日本再生戦略。メガソーラー。
平成24(2012)年 西高東低公示・・・・・復興特区。除染。スマートハウス。
平成23(2011)年 なお書き付き公示・・・エコポイント。IFRS。新・成長戦略。 


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