BRIEFING.364(2015.04.02)
再調達原価に考慮すべき費用
不動産の価格を求める鑑定評価の手法は、原価法、取引事例比較法、収益還元法等に大別される。このうち原価法は、対象不動産の価格時点における再調達原価を求め、これに減価修正を行って積算価格を求める手法である。
再調達原価とは、対象不動産を価格時点において再調達することを想定した場合において必要とされる適正な原価の総額をいう。主として敷地購入費用と建物新築費用(通常の付帯費用を含む)である。では、次の費用もこれに含めてよいだろうか。
(1)敷地取得から竣工までの金利。
(2)土地を取得する際の仲介手数料。
(3)土地建物の取得に係る登録免許税、不動産取得税。
対象不動産が、分譲マンションの1戸であるなら次のものも問題となる。
(4)事業者が負担した販売費、広告宣伝費。
まず(1)については、考慮しないのが普通である。現にできあがっている物に、金利は関係ないということだろうか。但しそうすると開発法との整合性が問題となる。低金利の今なら大きな問題ではないが、高金利の時代には看過し難い問題となる。
(2)についても、考慮しないのが普通で、その理由としては次のことが考えられる。
①売買するつもりはなく、保有しているだけの人には関係ない
②売買であっても媒介なし(親子間、同族会社間等)の取引なら関係ない。
③考慮すると積算価格は上がるが、収益価格は下がるので、無視すべき(収益価格を求めない場合はどうするのかとうい問題は残る)。
(3)についても、考慮しないのが普通で、その理由として次のことが考えられる。
①取得する人にはかかるが、譲渡する人、保有している人にはかからない。
②取得する側の属性(学校法人等)で非課税の場合もある。
③上記(2)の③と同じ。
(4)についてはどうだろうか。豪華マンションなら、パンフレットもモデルルームも豪華だ。分譲価格の20%程度はこれらの費用と思ってもよい。しかし分譲後、その1戸が年月を経て中古市場へ回った場合には、これらを考慮することに若干の違和感があるし、上記(2)で否定した仲介手数料とどう違うのだとの批判もある。
しかしこれらの費用をかけたからこそ、その価格で販売ができたと考えれば、考慮すべきである。
分譲マンションの場合、市場が成熟しているため、現実には比準価格が重視され、積算価格のウエイトは低いと考えられる。しかし、うやむやにできる金額ではないことは確かである。