BRIEFING.365(2015.04.09)

建物の名称

分譲マンションには、それぞれ分譲に先立ち名前が付けられる。その多くは、デベロッパーのブランドに地名、さらに、ウエスト、シーサイド、ランドマーク、タワーといった特徴や個別性を示す言葉が2〜3付加され、長い名前になっている(書くのが面倒?)。

その長い名前は、竣工後「一棟の建物」の「建物の名称」として登記される。

「ロイヤルリッチ・マンション千代田・麹町ステーションフロント・スペシャルスカイビュータワー・イーストU番館」、こんなのがあれば登記官もあきれてしまうだろう。

一方、「専有部分の建物」にも「建物の名称」が登記される。「家屋番号」とは別に登記することができる。ただ、多くの場合「建物の名称」は単に部屋番号、たとえば405とか813とかいった数字とされている場合が多い。

部屋番号は、家屋番号の最後(所在地番の後)にも表示されるので、部屋番号が二重に表示されることとなっている。

ところで、分譲マンションのような区分所有でない建物、たとえば一棟の賃貸マンションにでも、自社ビルにでも、実は「建物の名称」を登記することができる。

不動産登記法第44条第1項第4号には、登記事項として「建物の名称があるときは、その名称」とある。「家屋番号」が登記所によって「法務省令で定めるところにより」付されるのに対し「建物の名称」は所有者が自由に付けて登記してよいと解される。

さらに、賃貸マンションやビルに限らず、一戸建住宅にも可能と考えられる。ただ、自宅に名前をつけて登記している人はまずいない。ベテラン土地家屋調査士でも、そんな例は見たことがないと言う。

しかし、登記の有無は別として、かつて粋人によって名称が付けられた自宅や別荘がある。倚松庵、鎖瀾閣、石村亭、潺湲亭、雪後庵(いずれも谷崎潤一郎)、白沙村荘(橋本関雪)、春風万里荘(北大路魯山人、没後命名)、三五荘(大阪の実業家・原田六郎)、活機園(住友家の大番頭・伊庭貞剛)等である。 

これに倣って皆様のご自宅に「建物の名称」を付けて登記してみてはいかがだろうか。「うちはマンションだから・・・」と言う方も大丈夫。専有部分の「建物の名称」を変更すればよい。

味気ない3桁の数字を「○○庵」とか「○○亭」としてみてはどうか。タワーマンションの最上階なら「天空の間」はどうだ。「名称」なのだから、本来はこの様な名前が原則で、数字の方が例外と言うべきではないだろうか。

ただ、「恥ずかしい」とか「売却価格が下がる」という指摘もあるところが悩ましい。


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