BRIEFING.366(2015.04.16)

収益還元法における総費用と積算法における必要諸経費等(1)

不動産の価格を求める基本的な手法は、原価法、取引事例比較法、収益還元法に大別される。また新規賃料を求める手法には、積算法、賃貸事例比較法、収益分析法等がある。

これらのうち、価格を求める手法の収益還元法と、新規賃料を求める手法の積算法とには、類似した概念の数値を加減する過程がある。

それは、収益還元法における「総費用」(@)の控除と、積算法における「必要諸経費等」(A)の加算である。

@は還元利回りで割り引く純収益を求めるため、総収益から控除するものとして必要になる。Aは基礎価格に期待利回りを乗じて求められた純賃料相当額に加算するものとして求められる。これらは次の通り示すことができる。

●(総収益−総費用) ÷還元利回り =収益価格
●基礎価格×期待利回り+必要諸経費等=積算賃料

@Aはともに不動産を賃貸運営してゆくに当たって賃貸人が負担すべき費用である。

不動産鑑定評価基準では、これらを次の用に説明している。

@「総費用の算定及び留意点」
対象不動産の総費用は、(中略)減価償却費(償却前の純収益を求める場合には計上しない。)、維持管理費(維持費、管理費、修繕費等)、公租公課(固定資産税、都市計画税等)、損害保険料等の諸経費等を(以下略)。

A「必要諸経費等」
不動産の賃貸借等に当たっては賃料に含まれる必要諸経費等としては、次のものがあげられる。
ア 減価償却費
イ 維持管理費(維持費、管理費、修繕費等)
ウ 公租公課(固定資産税、都市計画税等)
エ 損害保険料(火災、機械、ボイラー等の各種保険)
オ 貸倒れ準備費
カ 空室等による損失相当額

類似した項目を一方は文章で、もう一方は箇条書きで記している。なぜ書き方を統一しないのかという点はさておき、中身を精査するといくつかの違いが見えてくる。

次回はその相違点に迫る。


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