BRIEFING.367(2015.04.23)

収益還元法における総費用と積算法における必要諸経費等(2)

不動産鑑定評価基準による、収益還元法の「総費用」(@)と積算法の「必要諸経費等」(A)との違い(BRIEFING.366参照)は次の通りである。

(1)減価償却費は@では計上しない場合を認めている。
(2)貸倒れ準備費が@にはない。
(3)空室等による損失相当額が@にはない。

(1)に関しては、償却を含まない総費用から求められた純収益は、償却前純収益であるが、それに対応した還元利回りで還元するならそれもOKということである。償却分も見積もった還元利回りは、その分高目になる。Aでは償却を含めない場合を示しておらず、これを強行規定と解する説もあるが、還元利回り同様に、償却分を織り込んだ期待利回りを採用すれば、減価償却費を計上しない場合もOKとする意見もある。

(2)については、単に省略しただけで、@の最後の「諸経費等」に含まれるのだと解する説が有力である。

(3)については、収益側の控除項目として見るので必要ないと考えられる。逆に、そもそも何でAではこれを費用と見るのか、という疑問がある。

いずれにしろ、両者は類似の概念、というより同じものと考えるべきではないか。その上で、両者の書きぶり(箇条書きに統一すべき)や、その実質を統一すべきではないか。

その際、次の点を整理・検討しなければならない。

T.償却を織り込んだ還元利回り同様、償却を織り込んだ期待利回りを認めるか。
U.空室損失相当額を、積算賃料に加算する必要があるか。 

Tについては、還元利回りに認められるのに、期待利回りには認めないという理由が明確でなく、両者に認めてかまわないのではないだろうか。そうすると@Aともに、減価償却費を入れる入れないは利回りの性格に対応して決めることになる。さらに市場では、取引利回り(または粗利回り)の相場が形成されていると見ることもできる。これは、償却はもちろん他の経費まで織り込んだ利回りであるが、これについても還元利回り、期待利回りの両方で容認してよかろう。この場合、@Aはすべて不要となる。

Uについては、確かに賃借人交代時の避けがたい空室は生ずるものの、解約予告期間でそれを無視できる程度にすることができるし、そうできる水準の賃料こそ求めるべき賃料であろう。空室損失相当額の加算が、積算賃料が高めに求められる理由の1つになっていると考えられる。


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