BRIEFING.370(2015.06.04)

貸家建付地割合の地価水準反比例説と比例説

貸家の敷地(「貸家建付地」という)は、土地の自由な使用が借家権によって妨げられることから、財産評価基本通達では、その相続税評価が自用地より安くなるしくみとなっている。その割合は、財産評価基準書で定める当該地域の借地権割合と、借家権割合(全国一律)とから次の様に算出される。

地価水準   高 ←  → 低
a借地権割合(%) 90 80 70 60 50
b借家権割合(%) 30 30 30 30 30
a×b   (%) 27 24 21 18 15
1−a×b (%) 73 76 79 82 85

借地権割合は、高度商業地区等の比較的地価水準の高い地区で高率に設定されているため、貸家建付地割合もそのような地区ほど下がり、普通住宅地区等の地価水準の安い地区ではあまり下がらないということになる。

地価水準の高い地区においては、地価に見合う賃料が取れていない場合が多く、借家人に立退いてもらうには立退料が必要となる可能性があること等が考慮されているのだろう。

だが見方を変えると次の様にも考えられる。

一般に、地価水準の高い地区においては収益価格が高く、比準価格と同水準かそれを凌ぐ水準であることも(還元利回りの当否はさておくとして)多い。すなわち、賃貸用建物の敷地とすることが、土地を100%有効利用する手段となる地区なのである。

賃貸ビルが地価水準の高い地区に多いことや、ガラガラのマンションより満室のそれの方が取引価格が高いことからもそのことが窺える。

地価水準の低い地区においても更地を貸家建付地にしよう(賃貸マンションを建てよう)という人はいるにはいるが、多くは相続税対策である。

そうすると、貸家建付地割合は、地価水準の高い地区で高く、低い地区で低いと考えるべきではないか。

これまで貸家建付地割合については、@地価水準反比例説が通説で、前述の通達を定めた国税庁もこのスタンスである。しかし近年、A地価水準比例説も有力だ。

その背景として次のことが上げられる。

1.地価水準が比較的安定(賃料水準の下方乖離が生じにくい)
2.空室在庫の増加(立ち退きの困難性が低下)
3.定期借家権が普及(賃料水準を適正に保ちやすい)

4.敷金・権利金等の少額化(借家人の権利縮小)

東京都心においては、最近になって1、2は当てはまらない傾向が見られるが、@説に違和感が生じているのも事実である。


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