BRIEFING.374(2015.09.30)

注視区域・監視区域

本年1月、東京都は小笠原村に指定していた監視区域(BRIEFING.247参照)の期限が切れるのに伴い、5年間の再指定を行った。現在日本で唯一の監視区域である。この監視区域の指定は計6回目で今回の再指定で指定期間は計30年間にも及ぶこととなった。

国土利用計画法による土地取引規制のメニューとしては、@一定面積以上の事後届出制、A注視区域・監視区域における一定面積以上の事前届出制、そしてB規制区域における許可制がある。一定面積とは、市街化区域で2,000u以上、その他の都市計画区域で5,000u以上、都市計画区域以外で10,000u以上で、監視区域では知事がこの面積要件を小さくすることができる。

これらのうち、規制区域は昭和49年に制度ができて以来、指定実績がなく、平成10年にできた注視区域もこれまで指定されたことがない。

監視区域はご承知の通り、バブル時代には多く指定されていたものの、ここ10年ほどはその必要がなくなり、今では先述の小笠原村が空港建設がらみで指定されているのみである。

注視区域と監視区域について整理すると次表の通りである。

  一定面積以上 面積要件縮小可
事後届出制 全国 制度なし
事前届出制 注視区域 監視区域

この表を見ると、右上に「制度なし」の部分がある。「事前に届け出てもらうほどでもないが、事後でいいから小さい取引についても知りたいな。」そう感じる行政関係者の方は多いだろうが、その空白部分が上表の「制度なし」の部分である。

さて、最近の東京都心の地価はどうであろうか。オリンピック、パラリンピックの開催を控え、インバウンド投資もあって熱くなりすぎてはいないだろうか。「制度なし」の部分に何か制度を設ければそれを把握することができる。

注視区域の指定要件は、「地価が一定の期間内に社会的経済的事情の変動に照らして相当な程度を超えて上昇し、又は上昇するおそれがあり、これによって適正かつ合理的な土地利用の確保に支障を生ずるおそれがあると認められる区域」である。

監視区域の指定要件は、「地価が急激に上昇し、又は上昇するおそれがあり、これによって適正かつ合理的な土地利用の確保が困難となるおそれがあると認められる区域」である。

「制度なし」の部分を「観察区域」とでもして「地価の上昇の程度を観察して急激な上昇の兆し又は上昇のおそれを把握すべき区域」をそれに指定してはどうか。


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