BRIEFING.375(2015.10.06)

空に広がる電波伝搬障害防止区域

通信、放送等の事業のために必要となる固定地点間の一定の無線通信は「重要無線通信」として保護されている。それは電波法102条の21に定める次の無線通信である。

1.電気通信事業の用に供する無線局の無線設備
2.放送の業務の用に供する無線局の無線設備
3.人命若しくは財産の保護又は治安の維持の用に供する無線設備
4.気象業務の用に供する無線設備
5.電気事業に係る電気の供給の業務の用に供する無線設備

高層建築物の新築等でこれらの無線通信が障害を受けることとなるのを防ぐための区域は「伝搬障害防止区域」として指定され、この区域(帯状)に地上31mを超える建築物等を建築しようとする者は、それを総務大臣に届け出なければならないこととされている。

その高層建築物等が重要無線通信に障害を及ぼすと判断される場合には、建築主に対して当該工事に一定期間(2年間)制限が課せられる。

そしてこの間、重要無線局の免許人と建築主とが協議し、場合によっては総務大臣のあっせんを得て、重要無線通信の確保と建築主の財産権の保護との調和が図られるのである。

具体的には、建築主側が建築物の形状を変更・縮小する、無線設備の方を移設する、新・建築物の上に電波の中継局を作る、といった解決が図られるものと思われる。

伝搬障害防止区域図を縦覧すると、防止区域が都会の空を蜘蛛の巣のように覆っていることが分かる。

東京では、東京スカイツリーや東京タワーから四方八方この区域が帯状に伸びている。両国と代々木のNTTドコモのビルや東京都庁からも多く伸びている。大阪では生駒山の山頂や周辺の高嶺から主に大阪平野(西方)に向けて何本もの帯が伸びているのが分かる。南港のNTTドコモのビル、大阪府庁咲洲庁舎からも主に大阪平野(東方)に向けて伸びている。

防止区域に係る規程は、31m超の建築物等を建てる際に具現化する土地所有者の損害と、重要無線通信の公共性とうまく調整するしくみである。


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